Skip to content

発達障害の特性を活かす視点と将来の進路につなげる方法

「どうして、うちの子だけうまくいかないのだろう」
「このまま成長して、勉強や仕事はできるのだろうか」

発達障害やADHDと聞くと、多くの保護者の方がまず思い浮かべるのは“困りごと”かもしれません。忘れ物が多い、落ち着きがない、集団行動が苦手。学校生活の中では、どうしても「できないこと」が目につきやすいものです。しかし近年では、大人になってから発達障害に気づき、職場で人間関係や業務の進め方に困難を感じるケースも少なくありません。子どもの頃は「少し不器用なだけ」「努力が足りない」と受け止められ、自分の特性を理解しないまま社会に出てしまう。そして初めて、「環境が合っていなかった」と気づくのです。だからこそ、子どものうちから、「特性を直す」ことに目を向けるのではなく、「知り、活かす」という視点を持つことが大切です。特性は、見方を変えれば可能性の種でもあります。本記事では、発達障害の特性をどのように捉え、どのように将来へつなげていく方法があるのかをお伝えします。

 

発達障害の「特性を活かす」とはどういうことか

発達障害の支援というと、「困りごとを減らすこと」や「できないことを改善すること」に目が向きがちです。もちろんそれも大切です。しかし私たちが大切にしているのは、特性を理解し、活かすという視点です。

特性は、見方や環境が変われば“可能性”にもなります。ここでは、その考え方を整理していきます。

 

特性は「弱み」ではなく「傾向」

発達障害の特性は、「欠点」や「能力の不足」ではありません。それは、物事の感じ方や考え方、行動の仕方における“傾向”です。たとえば

 

・気が散りやすい
・じっとしているのが苦手
・特定のことに強いこだわりがある

 

これらは学校生活では困りごとになりやすいものです。しかし、それ自体が悪いわけではありません。気が散りやすいということは、周囲の変化に敏感とも言えます。特性を活かすとは、無理に消すことではなく、「どんな場面で力になるのか」を探すことなのです。

 

ADHDの特性が強みに変わる場面

ADHDの特性としてよく挙げられるのが、不注意・多動性・衝動性です。
学校では注意を受けることが多く、困りごととして捉えられやすい面があります。

しかし、場面や求められる役割が変わると、その見え方も変わることがあります。

 

・思いついたらすぐ行動する

→状況によっては行動力として活きる


・関心のあることとないことの差がはっきりしている

→条件が整えば関心があるものに高い集中力を発揮することがある


・思考が直線的ではなく、飛躍しやすい

→既存の枠にとらわれにくい

 

もちろん、これらが常に強みとして働くわけではありません。
衝動性がトラブルにつながることもあれば、集中の偏りが課題になることもあります。

ただし、環境や課題の設定が合ったときには、
それまで困りごととされていた特性が、別の意味を持つことがあります。

 

特性は環境によって変わる?

ADHDの特性(不注意・多動性・衝動性など)は、神経発達の特性であり、環境によって根本的に消えたり、まったく別のものに変わったりするわけではありません。

しかし、その現れ方や意味づけは状況によって大きく変わる場合があります。

 

・環境との相性によって、「困りごと」として目立つかどうかが変わる

・年齢とともに表れ方が変化することがある

・経験を重ねることで、自分なりの対処法を身につけ、コントロールしやすくなることがある

といったことが起こります。

 

例えば「落ち着きがない」と言われる特性も、大人数の一斉指導の場では課題になりやすい一方で、少人数の活動では行動の早さやエネルギーの高さが場を動かす力として働くことがあります。条件が整えば、発言の多さや反応の速さが、結果的にリーダー的な役割につながることもあります。特性そのものが変わったわけではありません。けれども、置かれる環境や役割が変わることで、その特性の「見え方」や「活き方」が変わるのです。

この視点は、「特性をなくす」のではなく、どの環境なら活かしやすいかを探るという考え方につながります。

 

なぜ学校の評価基準では特性が強みとして扱われにくいのか

一斉指導という仕組み

多くの学校では、ひとりの教師が多くの子どもに対して同じ内容を、同じペースで教える「一斉指導」が基本となっています。この仕組みは効率的である一方で、

 

・興味の偏りが大きい

・集中の波がある

・自分のペースで理解したい

 

といった特性は調整しにくくなります。

その結果、本来は探究心の強さや行動力として現れるはずの側面が、「落ち着きがない」「指示が通りにくい」と受け取られてしまうこともあります。

 

「できない」に注目されやすい構造

学校は、多くの子どもが同じ内容を、同じペースで学ぶ場所です。そのため、どうしても「みんなと同じようにできているかどうか」が目に入りやすくなります。

 

・周りより時間がかかる
・指示どおりに進められない
・集団の動きにうまく合わせられない

 

こうした違いは、集団の中ではどうしても目立ちます。すると、「その子に何があるか」よりも「何が足りないか」に視線が向きやすくなります。その結果、本当は持っている興味や発想力、集中力の芽よりも、「今うまくいっていない部分」のほうが強調されてしまうことがあります。

 

28

 

特性を強みとして気づける環境とは

興味関心を起点にした学び

子どもが本来持っているエネルギーは、「やらされる」ときよりも、「やってみたい」と感じたときに自然と動きやすくなります。興味のあるテーマに出会うと、自分から調べ始めたり、時間を忘れて取り組んだりすることがあります。その中で、工夫や試行錯誤が生まれ、学びが深まっていく姿が見られることもあります。普段は落ち着きがない、集中が続かないと見られている子どもでも、関心のある分野では驚くほど力を発揮することがあります。それは「集中できない子」なのではなく、「関心が合えば集中できる子」である可能性を示しています。その違いに周囲が気づける環境こそが、特性を強みとして見いだす土台になります。

 

小集団、個別対応の強み

子どもによって、理解しやすい説明の方法も、集中できる時間の長さも異なります。少人数であったり、柔軟に対応できる環境であれば、その違いに合わせた関わりがしやすくなります。たとえば、活動の手順を細かく分けて伝えたり、言葉だけでなく視覚的に示したり、その日の様子に応じて取り組む時間を調整したりすることが可能になります。特性そのものが変わるわけではありません。しかし、環境とのずれが小さくなることで困りごとが表に出にくくなることはあります。その結果、「できないこと」よりも「できていること」に目が向きやすくなり、その子の力が見えやすくなります。

 

成功体験の積み重ねで自己肯定感を育てる

強みは、周囲から言われることで気づくこともありますが、何よりも自分自身が実感することによって育っていきます。最後までやり切れた経験や、自分の考えを伝えられた体験、得意なことを認められた出来事は、「自分にもできることがある」という感覚につながります。こうした小さな成功が積み重なることで、自己肯定感は少しずつ育まれます。そしてその土台があることで、特性を否定的に捉えるのではなく、どう活かせるかを考えやすくなります。

 

フリースクールやその他の選択肢

学びの場は、学校だけではありません。フリースクールや少人数制の学習支援教室、放課後等デイサービスなど、さまざまな選択肢があります。これらの場では、一人ひとりの様子を丁寧に見やすく、特性やその日の状態に合わせた柔軟な関わりがしやすい環境が整いやすいという特徴があります。特性が変わるわけではありませんが、環境との相性が合うことで困りごとが和らぎ、その子の得意な面や可能性が見えやすくなることがあります。大切なのは場所の名前ではなく、その子に合った環境かどうかという視点です。環境が変わることで、特性の見え方も変わっていきます。

 

26

 

特性を将来の仕事や進路につなげる考え方

特性は、なくすものでも、無理に矯正するものでもありません。大切なのは、「どうすれば活かせるか」という視点で考えることです。進路や仕事を考えるとき、多くの場合は「何ができないか」ではなく、「どんな環境で力を発揮しやすいか」という相性が鍵になります。たとえば、興味のあることに強く引き込まれる特性があるなら、専門性を深める分野で力を発揮しやすいかもしれません。行動が早い、思いついたらすぐ動ける特性は、変化の多い環境や新しいことに挑戦する場面で活きることがあります。発想が広がりやすい特性は、企画や創作、問題解決の場面で役立つこともあります。もちろん、どの特性にも工夫やサポートは必要です。しかし、「困りごと」としてだけ捉えるのではなく、「どの場面なら活きるのか」と問い直すことで、将来の選択肢の見え方は変わります。近年は、神経多様性(ニューロダイバーシティ)の観点から、個々の特性と業務の適合性を重視する企業も増えています。

※神経多様性(ニューロダイバーシティ)については 「ニューロダイバーシティとは?企業事例から読み解く特性の活かし方」 をご確認ください。

 

実際の職場で行われている業務ローテーションの取り組み

たとえば、高齢・障害・求職者雇用支援機構( JEED )が紹介している企業事例では、発達障害のある社員に対して、いきなり業務を固定せず、一定期間ごとに複数の業務を経験できる仕組みを設けています。

具体的には、

 

・データ入力や書類整理などの事務作業

・検品や品質チェックなど、正確さが求められる業務

・軽作業やルーティン業務

 

といった異なる種類の仕事を、数週間〜数か月単位で順番に担当します。

その間、上司や支援担当者が

 

・作業スピード

・本人の「やりやすさ」の感覚

・ミスの傾向

・本人の疲労度

 

を確認しながら記録を取り、どの業務で最も力を発揮できているかを見ていきます。

もし「集中は続くが対人調整が強い負担になる」「正確さは高いがスピード重視は負担が大きい」といった傾向が見えた場合は、配置を調整します。

重要なのは、「合わない=能力がない」と判断するのではなく、環境や業務内容との相性を見極めるという姿勢です。

 

研究が示す「強みをどう捉えるか」の重要性

こうした実践は、現場の工夫だけでなく、研究からも示唆が得られています。

イギリス・バース大学を中心とした国際研究(Psychological Medicine掲載)では、ADHDと診断された成人と、診断のない成人を対象に、「創造性」「ユーモア」「直感力」「ハイパーフォーカス」などの特性について調査が行われました。ここで問われたのは、第三者による能力評価ではなく、本人がどの程度それらを自分の強みだと認識しているか、そしてそれを日常生活で活かせていると感じているかという点です。その結果、自分の強みを自覚し、活用していると感じている人ほど、

 

・主観的幸福感が高い
・生活の質が高いと感じている
・不安や抑うつ、ストレスが少ない傾向にある

 

という関連が示されました。本研究は、能力の客観的優劣を検証したものではなく、自己認識と心理的指標との関連を扱ったものです。つまり、「実際にどれだけ優れているか」ではなく、自分の特性をどう理解し、どう意味づけているかという主観的な視点が、心理的な安定や生活の質と関係している可能性が示唆されたのです。特性を「困りごと」としてだけ捉えるのではなく、「どのように活かせるだろうか」と問い直すこと。その視点の転換が、将来の選択肢の広がりや、自己肯定感の土台につながる可能性があります。

こうした研究結果は、特性をどう意味づけるかという視点が、子ども時代からの関わりにおいても重要であることを示唆しています。

 

 

保護者が今日からできること

特性を「どう活かすか」という視点は、特別な支援の場だけで育つものではなく、日々の家庭での関わりの中から少しずつ形づくられていきます。つい「できていないこと」や他の子との違いに目が向きがちですが、大切なのはその子自身の変化です。昨日より少し落ち着いていた、前より準備が早くなった、自分なりに工夫していた――そうした小さな積み重ねを見つけ、言葉にして伝えることが、「自分にもできることがある」という感覚を育てます。比較ではなく成長を見る姿勢は、自己理解と自信の土台になります。また、特性は環境との相性によって困りごとにも強みにもなるため、予定を見える形にする、手順を分ける、疲れたら休める余白をつくるなどの工夫によって力は発揮しやすくなります。安心できる場所があるからこそ子どもは挑戦でき、その安心の積み重ねが、「自分の特性をどう活かすか」を考える力へとつながっていきます。

 

27

 

安心できる環境を整える

特性は環境との相性によって、困りごとにも強みにもなる可能性があります。予定を見える形にする、手順を分ける、疲れたら休める余白をつくるなど、少しの工夫で力は発揮しやすくなります。安心できる場所があるからこそ、子どもは挑戦できます。その安心の積み重ねが、「自分の特性をどう活かすか」を考える力につながっていきます。

 

ステラベースでは、こうした「強みを見つける視点」と「安心できる環境づくり」を大切にしながら、一人ひとりの特性に合わせた関わりを行っています。子ども自身が自分の特性を理解し、将来へとつなげていけるよう、日々の小さな成功体験を積み重ねる支援を大切にしています。

 

 

 

 

 

ステラBASEへのお問い合わせ・ご質問・お悩みは、お気軽に「問い合わせフォーム」より相談ください。