不登校のお子さんを持つ保護者の方にとって、「欠席日数が増えてしまって大丈夫だろうか」「勉強の遅れが心配」といった不安を感じることは、決して珍しいことではありません。近年は、不登校への理解が広がり、学校に通うことだけが学びではないという考え方も少しずつ浸透してきました。現在では、自宅学習やフリースクールなど学校外での学びが、一定の条件を満たすことで「出席」として認められる「出席扱い制度」があります。この制度を活用することで、欠席日数への不安を和らげながら、お子さんのペースに合った学びを続けることが可能になります。この記事では、出席扱い制度の仕組みや申請方法、利用する際のポイントについて、分かりやすく解説していきます。
制度の概要について
「出席扱い制度」とは、何らかの理由で学校に通えない児童生徒が、学校外の施設(フリースクール等)に通ったり、自宅でICT教材(パソコンやタブレット)を使って学習したりした場合に、校長の判断で「学校に出席した」とみなすことができる制度です。
これは文部科学省が公式に認めている仕組みであり、義務教育段階(小・中学校)において特に重要な意味を持ちます。通知表の欠席日数が減るだけでなく、条件を満たせば「学習評価(成績)」に反映される可能性もあります。
出席扱い制度の対象となる児童生徒
出席扱い制度の対象となるのは、義務教育段階にあたる小学生・中学生です。原則として、学校に継続して通うことが難しい状況にあり、不登校の状態にある児童生徒が想定されています。
不登校の理由については、
・心身の不調
・学校生活への不安やストレス
・発達特性による困難
・家庭環境の変化
などの特定の理由に限定されていません。
対象となる学習方法
ひとくちに「学校外での学習」といっても、認められやすいものとそうでないものがあります。代表的なものを紹介します。
オンライン授業(ICT)を活用
ICTとは、Information and Communication Technology(情報通信技術)の略で、パソコンやタブレット、インターネットなどを活用して、情報を収集・共有し、相互にやり取りを行うための技術の総称です。民間のオンライン家庭教師や、Zoomなどを使ったWeb授業も対象になり得ます。重要なのは「双方向性があること(フィードバックがあること)」と「計画的な学習であること」です。単にYouTubeの教育動画を眺めているだけでは認められにくいですが、そこに指導者のチェックが入れば可能性は高まります。
すららを使っての学習
「すらら」は、この制度を利用する際に最もよく使われているICT教材のひとつです。文部科学省の要件には「学習の履歴が残ること」が含まれており、AI教材である「すらら」は学習時間や内容が自動で記録されるため、学校への報告がスムーズに行えます。多くの自治体や学校で導入実績があるため、先生方への説明がしやすいのも特徴です。
学校から配布されるプリント
以前からある方法です。学校からプリントをもらい、自宅で解いて提出します。ただし、現在の文部科学省の「自宅学習での出席扱い(ICT活用)」のガイドラインでは、ICTの活用が主軸に置かれています。プリント学習のみで申請する場合は、「訪問指導(先生が家に来る)」とセットで判断されるケースが一般的です。またデジタルの記録がない分、親御さんが学習記録を細かくつけるなどの労力が必要になることが多いでしょう。
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文部科学省の定める条件
自宅学習(ICT活用)で出席扱いとして認められるためには、以下の7つの要件(ガイドライン)を満たす必要があります。
- 保護者と学校の連携:常に連絡が取れる協力関係にあること。
- ICT等の活用:パソコンやタブレット等を使った学習であること。
- 訪問等による対面指導:担任の先生やスクールカウンセラーなどと、定期的(週1回〜月1回程度)に対面する機会があること。
- 計画的な学習プログラム:子どもの学力に合った学習計画があること。
- 校長の把握:校長が学習状況や対面指導の状況を把握していること。
- 学校の教育課程に照らしている:教科書の内容など、日本の教育課程に基づいていること。
- 教育委員会への報告:学校が教育委員会へ連携・報告していること。
※特に「3. 対面指導」はハードルになりがちですが、最近ではオンラインでの面談でも可とする柔軟な学校も増えています。
申請方法について
この制度は「自動的に適用されるもの」ではなく、保護者からの申請と学校との協議が必要です。主だった方法は以下の二つになります。
保護者による直接申請
保護者が自ら学習計画を立て、毎月の学習記録を作成して学校に提出する方法です。費用は抑えられますが、学校側(担任・校長)に制度の理解がない場合、一から説明して交渉する必要があります。また、毎月のレポート作成が保護者の負担になることがあります。もしも親御さんご自身の手で申請を行う場合は文部科学省の通知文書を印刷して持参するなど、根拠を示して相談しましょう。
フリースクール等と連携して行う申請方法
「出席扱い」に対応している通われているフリースクールなどのサポート機関を利用する方法です。これらの機関は学校への連携ノウハウを持っており、「学習計画表」や「月次報告書」の作成を代行してくれるため負担は少なくなります。学校側も「専門機関が監修しているなら」と安心してくれるケースが多く、認定へのハードルが下がります。
制度を利用するメリット
子どもの自己肯定感の回復:「学校に行けなくても、自分は頑張っている」という自信につながります。
生活リズムの安定:「出席のために今日はここまでやろう」という目標ができ、生活にメリハリが生まれます。
内申点・進路へのプラス:欠席日数が減ることで、高校入試(特に公立高校)の際に不利になりにくくなります。また、学習成果が評価されれば成績がつくこともあります。
制度を利用する上での注意事項
最終決定権は「校長」にある:どれだけ条件を揃えても、最終的に認めるかどうかは校長の裁量です。学校によって対応に差があるのが現状です。
成績評価とは切り分けて考えられる:出席として認められても、「成績(1〜5の評定)」が必ず付くわけではありません。評定を行うためには、テストの受験など、別途条件が設けられる場合が多くあります。
対面指導:人と関わること自体が難しい状態のお子さんにとっては、「先生との面談」が心の負担になってしまう場合があります。
制度を使わないという選択もある
出席扱い制度は、学びを支えるための選択肢のひとつですが、必ず利用しなければならないものではありません。
お子さんの状態によっては、まず心身の回復や安心して過ごせる時間を大切にすることが、何より必要な場合もあります。
大切なのは制度を使うかどうかではなく、今のお子さんにとって無理のない選択をすることです。
状況が変われば、後から制度の利用を検討することもできます。
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出席扱い制度についてのよくある質問
Q. 出席扱い制度が適用されるのは、いつの時点からですか?
A. 学校長の判断によって異なります。
制度が適用される時期については、
・制度の利用が決定した日
・学校が保護者からの申請を受理した日
・不登校の状態が始まった日
など、いくつかの考え方がありますが、文部科学省から一律の基準が示されているわけではありません。過去の日付にさかのぼって出席扱いとする場合には、「いつ」「どのような内容の学習を行っていたか」が分かる記録を学校に共有することが大切です。なお、すららなど一部のICT教材には学習履歴が自動で残る仕組みがあります。こうした記録を活用すると、学校との相談が進めやすくなる場合があります。
Q. 出席扱い制度を利用するために、診断書は必要ですか?
A. 必ずしも必要ではありません。
出席扱い制度についての文部科学省の通知では、診断書の提出を必須とする記載はありません。ただし、不登校の背景に病気や障害などが関係している場合には、診断書や医師の意見書があることで、学校側の理解が得やすくなり、手続きがスムーズに進むこともあります。
Q. 不登校でも、成績をつけてもらうことは可能ですか?
A. 学校の判断によりますが、可能性はあります。
不登校の児童生徒の成績評価については、各学校の学校長の判断に委ねられており、評価の方法や基準は学校ごとに異なります。
そのため
・どの程度の学習が必要か
・テストや課題提出が必要か
といった点については、事前に学校へ確認しておくことをおすすめします。
Q. 条件を満たしているのに、学校が出席扱いを認めてくれない場合はどうすればよいですか?
A. ひとりで抱え込まず、第三者に相談することが大切です。
出席扱い制度は、国が示している正式な制度のひとつです。学校によって運用に差がある場合もあるため、話し合いが難しいと感じたときには、市区町村の教育委員会や教育相談窓口に相談してみましょう。第三者が間に入ることで、制度の考え方や運用について整理され、前向きな話し合いにつながるケースも少なくありません。
高校生の不登校について
ここまでは主に小・中学生の話でしたが、高校生の場合は事情が異なります。高校は義務教育ではないため、進級・卒業には「単位の取得」が必須です。単に出席日数の問題だけを解決しても、テストを受けたり課題を提出して単位を取らなければ進学できません。ただし、2024年度(令和6年度)より制度が改正され、全日制高校でもオンライン授業等で単位認定ができる幅が広がりました(上限36単位など)。それでも、小中学校に比べるとハードルは非常に高いため、出席扱いを目指すよりも、通信制高校への転校など「学ぶ環境自体を変える」選択をするご家庭が多いのが現状です。
制度の現状
文部科学省の調査(令和6年度発表)によると、不登校児童生徒数は過去最多の約34万人となっています。そのうち、自宅でのICT学習で出席扱いとなった児童生徒数は1万3,000人程度で、これは全体のわずか3%です。制度の利用者は年々増加傾向にありますが、まだ非常に少ないと言わざるを得ません。この背景には「学校側の認知不足」や「制度側の周知不足」が存在します。しかし、制度自体は国が強く推進しており、今後さらに利用しやすくなると予想されます。
名古屋市の場合
名古屋市は、不登校支援において比較的柔軟で先進的な取り組みを行っている自治体のひとつです。名古屋市教育委員会は、学校復帰だけでなく「社会的自立」を目標に掲げています。市の教育センター(ハートフレンドなごや)や、適応指導教室など公的な支援のほか、民間のフリースクールとの連携にも積極的です。特に名古屋市では、学校長の承認により、要件を満たしたICT学習による出席が認められた事例も複数報告されていますもしも制度の利用を検討されているようでしたら、まずは担任の先生に「名古屋市のガイドラインに沿って、自宅学習を出席扱いにしたい」と相談することから始めてみるのが良いと思います。
子どもの学びを支える選択肢として
お子さんの不登校について、不安や戸惑いを感じていらっしゃる保護者の方も多いことと思います。周囲の様子を見て、「うちの子だけが違う道を歩んでいるのではないか」と感じてしまうのも、決して特別なことではありません。けれども、大切なのは、誰かと同じペースで進むことや、決められた形に無理に当てはめることではありません。お子さんが安心できる環境の中で、少しずつ心と体を整えながら、自分なりの学びを積み重ねていくことが、次につながる大切な一歩になります。出席扱い制度は、そうした学びを支えるための選択肢のひとつです。「今は学校に通えなくても、学びを続けている」という事実が、親御さんにとっても、お子さんにとっても、心の支えになることがあります。もし、制度の利用について迷いや不安がありましたら、どうぞひとりで抱え込まずにご相談ください。私たちステラBASEも、お子さんにとって無理のない学びの形を一緒に考えるお手伝いができれば幸いです。お子さんが安心して前を向ける環境づくりのために、できることがあるかもしれません。
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