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夏休み、どう過ごす?――フリースクールに通う子供の“困りごと”とそのヒント

もうすぐ夏休み。
子供たちにとっては、学校やフリースクールから解放される“特別な時間”であり、同時に、いつものリズムが崩れたり、人とのつながりが途切れたりしやすい時期でもあります。

とくに、フリースクールに通っているお子さんの場合、「毎日通う場所」がなくなることが、心の不安定さや孤独感を引き起こすことがあります。
「のんびり過ごせばいい」と思っていたのに、なんだか元気がない、よく眠れていない、イライラが増えている……。そんな変化に、戸惑うご家庭も少なくありません。

このブログでは、夏休み中に起こりやすい“心の揺れ”について、発達心理の視点から見つめながら、家庭でできる小さな支え方を紹介していきます。

親子でがんばりすぎずに、ちょうどいい夏を過ごすためのヒントになれば幸いです。




孤独感や不安感が強まる

夏休みに入ると、子供たちの生活環境に大きな変化が生じます。とくに、フリースクールに通っている子供たちにとっては、日常的に関わっていたスタッフや友だちと会えなくなることが、心理的に大きな影響を及ぼすことがあります。

普段は安心して過ごせる居場所があることで保たれていた自己肯定感や社会的つながりの感覚が、夏休み中には一時的に失われてしまい、「自分は誰からも必要とされていないのではないか」「自分の存在をわかってくれる人がいない」といった感覚につながることがあります。

これは、発達心理学の視点から見ると、「愛着の再活性化」ともいえる現象です。子供たちは、信頼できる大人とのつながりの中で安心を感じ、情緒の安定を保っています。そのつながりが弱まることで、情緒的な不安定さや退行的な行動(甘え、癇癪、過度の無気力など)が見られることもあります。

さらに、SNSやテレビ、周囲の話題などから「友だちと遊ぶ」「家族旅行に出かける」などの“典型的な夏休み”のイメージが押し寄せてくると、「それができていない自分は普通じゃないのかも」と感じやすくなります。この「社会的比較」は、自尊心を低下させる要因として知られており、思春期の子供にとってはとくに影響が大きくなりやすい時期です。

保護者の方からは、「特に何も困っていなさそう」「のんびり過ごしているように見える」と感じられるかもしれません。しかし、目には見えない孤独や不安が、静かに心の中で大きくなっていることがあります。
「最近、何も言わなくなった」「以前より笑顔が減った気がする」といった変化が見られたら、それは子供からのサインかもしれません。

まずは、「ひとりで感じている気持ちを、わかってくれる大人がここにいるよ」というメッセージが伝わることが大切です。会話がなくても、そばにいるだけで安心できる時間を意識的に作ること。それが、夏休みという不安定な時期のなかで、子供の心を守る大きな支えになります。


保護者ができる対応のヒント

夏休みに見えにくくなる子供の孤独感に対して、保護者にできることは「特別なこと」ではなく、日々の中の小さな関わりです。子供の自己肯定感や安心感を支えるうえで、次のような対応が効果的だといわれています。


1.共感的なまなざし(わかろうとする姿勢)

「今日一日、どんな気分だった?」「最近、気になることある?」といった問いかけができなくても大丈夫です。大切なのは、「あなたの感じていることに興味がある」「あなたのままを受け止めたい」というまなざしを、言葉や表情、態度で伝えること。
臨床心理の分野では、これを「共感的理解(empathic understanding)」と呼び、子供の心理的安全性を高める土台になるとされています。


2.つながりの再確認(短いスキンシップや共有時間)

年齢が上がると、直接的なスキンシップを避ける子もいますが、一緒にテレビを見たり、何気ない家事を手伝ってもらったりといった「日常の共有」も、立派なつながりの時間です。
「今日のおやつ一緒に食べよっか」「ゴミ捨て一緒に行ってくれると助かるな」など、軽い呼びかけの中に、「あなたと過ごす時間が嬉しい」というメッセージを込めましょう。


3.比較を手放す(その子らしい夏を尊重する)

「周りと比べて…」という思いは、子供だけでなく保護者自身にも湧いてくるものです。「どこかに連れていかなくては」「何かしなければ」——そうした焦りを感じたときは、深呼吸をして、目の前のお子さんの表情やペースに目を向けてみてください。
“その子が安心して過ごせる夏”こそが、何よりの学びと回復の時間になります。


4.居場所の情報を共有する(孤立させないために)

もし地域のフリースクールや子供の居場所が夏休み中にも開いているようであれば、子供に無理のない形で紹介してみるのもよいでしょう。
また、オンラインの交流や手紙のやりとりなど、直接会えなくても“誰かとつながっている”実感を持てる工夫が、孤立感の緩和に役立ちます。


おわりに

子供たちにとって夏休みは、日常の安心感が一時的に薄れる期間でもあります。だからこそ、「家が一番ほっとする場所だ」「おうちの人が自分を見てくれている」という実感が、心の支えになります。

保護者の皆さんも、無理に“正解”を探さなくて大丈夫です。
少し立ち止まりながら、一緒に“ちょうどいい夏”を探していけたら、それが一番の安心になるはずです。

 

 

 

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