子どもと話していると、「ちゃんと聞いているはずなのに、思った通りに動いてくれない」「会話が途中で止まってしまう」と感じることはありませんか?こうした違和感は、保護者の方なら誰でも経験することかもしれません。たとえば、
・指示を出しても、なぜか違うことをしてしまう
・友だちとの会話で、急に話が途切れてしまう
こうした行動は、「わがまま」や「空気が読めない」からではありません。特に発達に特性のある子どもは、言葉自体は理解できても、やり取りのタイミングや受け取り方が少しずれていることがあります。
この記事では、発達障害また発達に特性のある子どもがコミュニケーションでつまずきやすい理由や、その特性ごとの違い、さらに家庭や教育現場で取り入れやすい具体的な支援方法について整理しています。是非最後まで、ご一読ください。
コミュニケーションに関する発達障害の基本理解
発達障害のある子どもに対して、「コミュニケーションが取れない」と言われることがあります。しかし実際には、まったく取れないわけではなく、“取り方や伝わり方が少し違う”ことが多いのが特徴です。発達障害、とくにASD(自閉スペクトラム症)やADHDなどの特性がある場合、言葉そのものの理解だけでなく、
・相手の気持ちを推測すること
・場の空気を読むこと
・暗黙のルールを察すること
・表情や声のトーンから感情を読み取ること
といった「見えない情報」の処理に独特の傾向がみられることがあります。実際に、世界的に広く用いられている精神疾患の診断基準であるDSM-5(American Psychiatric Association, 2013)では、ASDの中核的特徴として「社会的相互性の困難」「非言語的コミュニケーションの困難」「関係性の理解・維持の難しさ」が挙げられています。これは、言語能力そのものの問題というより、社会的文脈の理解や相互調整の違いを示すものです。
なぜ「言葉は分かるのに」すれ違うのか
発達障害のある子どもでは、言葉自体は理解できても、やり取りがうまくかみ合わないことがあります。たとえば、
・冗談をそのまま受け取ってしまう
・指示があいまいだと動けない
・興味のある話題だけ一方的に話してしまう
・相手の話を遮ってしまう
こうした行動は「わがまま」「空気が読めない」と誤解されがちですが、多くは特性による情報処理の違いから起こります。コミュニケーションは単なる「話す力」ではありません。
・相手の意図を理解する力
・状況に応じて表現を調整する力
・非言語情報(表情・ジェスチャー)を読み取る力
発達障害のある子どもは、これらの力の中で得意な部分と苦手な部分が混ざっていることがあり、そのためにやり取りがかみ合いにくくなることがあります。

ASD、ADHDなど特性による違い
発達障害とひとくくりにされがちですが、特性によってコミュニケーションの困り方は異なります。
ASDの特徴
ASD(自閉スペクトラム症)では、社会的文脈や暗黙のルールの理解に独特の傾向がみられます。
・言葉を文字通りに受け取りやすい
・皮肉や冗談が伝わりにくい
・表情や声のトーンから気持ちを推測することが難しい
・関心の強い話題を中心に会話が進みやすい
これは「理解力がない」のではなく、社会的情報の処理の仕方が異なることが背景にあると考えられています。
ADHDの特徴
ADHD(注意欠如・多動症)では、注意の持続や衝動性がやり取りに影響します。
・相手の話を最後まで聞く前に話し始める
・話題が途中で変わる
・順番を待つのが難しい
内容の理解よりも、会話の“リズム”や“タイミング”の部分でずれが生じやすいのが特徴です。ASDとADHDが併存する場合は、文脈理解の難しさと衝動性が重なり、より複雑なすれ違いが起こることもあります。重要なのは、これらを「性格の問題」と捉えないことです。困り方の質を見極めることが、適切な支援につながります。
発達段階による違いと発達段階表
コミュニケーションの力は、年齢とともに段階的に発達します。
・幼児期:要求や感情を言葉で伝える
・学童期:相手の立場を考えたやり取り
・思春期:抽象的な会話や空気の共有
発達障害のある子どもは、この発達のスピードや順序にズレがみられることがあります。
発達段階表とは
発達段階表とは、子どもの成長を年齢や発達の順序ごとに整理した目安の一覧です。運動、言語、社会性、認知などがどのように育つかを示しています。
これは「できる・できない」を判定する表ではなく、
・今どの段階にいるのかを把握する
・どの力が育ち途中なのかを知る
・次の支援の方向を考える
ための地図のようなものです。
発達段階の考え方は、ピアジェやヴィゴツキー、エリクソンらの発達理論を基盤としています。現在の発達検査(新版K式発達検査、WISCなど)も、この段階的発達の考えをもとに構成されています。
大切なのは「矯正」ではなく「理解」
コミュニケーション支援の目的は、子どもを「普通にさせること」ではありません。
その子が安心して伝えられる方法を見つけ、得意な伝え方を活かしながら、苦手な部分を少しずつ補っていくことが大切です。環境や関わり方が変わるだけでも、コミュニケーションの取りやすさは大きく変わります。発達障害のコミュニケーションは「能力の欠如」ではなく「スタイルの違い」と捉える視点が、適切な支援やトレーニングの土台になります。

発達障害のある子どもへの具体的なコミュニケーション支援
特性に合わせた環境調整や関わり方によって、やり取りのしやすさが変わることも少なくありません。ここでは、家庭と教育現場それぞれで意識したい支援のポイント、そしてトレーニングの活用方法を整理します。
関わり方を工夫する
家庭は、子どもがもっとも安心して試行錯誤できる場所です。まず大切なのは、「できていないこと」よりも「どうすれば伝わりやすいか」に目を向けることです。
① 曖昧な表現を減らす
「ちゃんとして」「あとでやって」などの抽象的な指示は混乱のもとになります。
→ 「今から10分後に宿題を始めよう」「プリントを1枚やろう」のように具体化すると理解しやすくなります。
特に、ASD傾向のある子どもは、具体的・明示的な指示のほうが理解しやすく、抽象的・曖昧な表現は理解が難しくなる傾向があることが、語用論や文脈理解に関する複数の研究から示唆されています。
②視覚的にわかる形で伝える
言葉だけでなく、メモ・チェックリスト・スケジュール表などを活用すると安心感が高まります。発達障害のある子どもの中には、耳から入る情報をその場で整理し続けることに負担を感じやすい特性をもつ場合があります。口頭指示は一度で消えてしまうため、注意の切り替えが苦手な子や、ワーキングメモリに課題のある子にとっては混乱につながることもあります。
③ 感情の言語化をサポートする
「悔しかったんだね」「びっくりしたんだね」といったように、大人が子どもの気持ちを言葉にして返すことで、体験している感情と“ことば”が少しずつ結びつきやすくなります。自分の気持ちをうまく説明できないとき、子どもは戸惑いや混乱を抱えやすくなります。そこで大人が状況と感情を整理して伝えることで、「今の気持ちはこう表せるのか」と理解する手がかりになります。
④ 成功体験を積み重ねる
うまく伝えられた場面や、少しでも工夫できた行動に対して、「今の言い方、わかりやすかったよ」「順番を待てたね」と具体的に伝えることで、子どもは自分の行動を理解しやすくなります。何がよかったのかを明確にフィードバックすることが、自信や次の行動への意欲につながることがあります。コミュニケーションの力は、注意や指摘だけでは育ちにくいものです。できた部分に目を向け、それを積み重ねていく関わりが土台になります。
落ち着ける空間を作る
発達に特性のある子どもにとって、安心して過ごせる「落ち着ける空間」を用意することは、コミュニケーションや学習のしやすさに大きな影響を与えます。環境が整っているだけで、緊張や不安が軽減され、子どもは自分のペースで考えたり、行動したりすることができます。たとえば、
・静かで視界が整理された机やコーナーを用意する
・好きなクッションや照明で心地よさを演出する
・音や刺激が強い場所を避け、落ち着ける時間帯を確保する
こうした工夫により、子どもは自分の気持ちを整理しやすくなり、指示や会話もスムーズに理解できるようになることがあります。
保護者、指導者が意識したいポイント
子どもが思うように動けなかったり、行動がうまくいかないとき、つい「どうしてできないの?」と声をかけたくなることもありますよね。でも、まず大切なのは、結果だけを見て注意するのではなく、「どうしてその行動になったのか」をそっと考えてみることです。そこには、発達の特性や疲れ、次に何をすればよいかがわかりにくい状況、指示が少しあいまいだったことなど、さまざまな理由が隠れていることがあります。
子どもが安心して行動できるようにするためには、環境や伝え方を少し工夫してあげることが大切です。たとえば、ルールや手順をわかりやすく示したり、やることを具体的に伝えたり、イラストやチェックリスト、スケジュール表などを使って目で確認できる形にすると、子どもは迷わず安心して動くことができます。
ソーシャルスキルトレーニングの活用
ソーシャルスキルトレーニング(SST)とは、対人場面で必要となるコミュニケーションのスキルを、具体的な場面設定の中で学び、練習していく方法です。あいさつの仕方、頼み方や断り方、気持ちの伝え方、順番の待ち方などを、ロールプレイやモデル提示を通して段階的に身につけていきます。特徴は、「なんとなく覚える」のではなく、場面を切り取り、行動を分解し、言語化して練習する点にあります。
たとえば
「友だちに貸してほしいとき」というテーマの場合
①近づく
②名前を呼ぶ
③理由を伝える
④返事を待つ
といった手順に分けて確認します。こうした構造化は、暗黙のルールを直感的に学びにくい子どもにとって理解の助けになります。また、SSTでは成功体験を重視し、できた行動を具体的にフィードバックします。繰り返し練習することで、「どう振る舞えばよいか」が予測可能になり、不安の軽減につながることもあります。
ただし、SSTだけですべてが解決するわけではありません。練習の場ではうまくできても、日常生活の中ですぐに同じようにできるとは限らないこともあります。そのため、家庭や学校でのさりげない声かけや環境の工夫とあわせて、無理のないペースで続けていくことが大切です。

ステラBASEの取り組み
私たち、ステラBASEでも日々の活動の中で、SSTのカードゲームを通じてコミュニケーションの力を自然に学べることを大切にしています。その一例として、お題カードに沿って順番に一言自己紹介を行い、その内容を覚えたうえで自己紹介をもとにしたクイズを出し合う活動を取り入れています。正解した人がポイントを獲得し、最終的に最もポイントの多い人が勝ちとなるシンプルなゲームです。
こうした活動を通して、相手の話をよく聞く力や記憶力を育てるとともに、自分のことを伝える練習や、自然なコミュニケーションのきっかけづくりにつなげることをねらいとしています。特別なことをするのではなく、遊びの中で少しずつ力を伸ばしていくことを大切にしています。
そして何よりも大切にしているのは、課題の達成だけにとらわれず、子どもたちが安心できる空間の中で、自然に楽しく参加できる時間を作ることです。
安心できる環境で学ぶコミュニケーションの重要性
SSTや家庭での工夫を積み重ねることで、子どもは少しずつ「伝えられる・聞ける・待てる」を体験できます。そして、子どもが安心できる空間の中で行うことで、緊張や不安が軽減され、楽しくコミュニケーションを学べるようになります。大切なのは、失敗しても怒らず、成功体験を丁寧に積み重ねることです。
ステラBASEでは、子ども一人ひとりの特性やペースに合わせた学びの場を提供しています。学習支援だけでなく、生活リズムの安定や心の居場所づくりにも配慮し、家庭や学校と連携しながら子どもが過ごしやすい環境づくりをサポートしています。フリースクールの利用や制度の活用について知りたい場合は、気軽にご覧いただければと思います。
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