
私にも、「自分で自分が大嫌い」そう思っていた時期がありました。
そんな私が今、悩んでいる子供達へのメッセージを書かせていただけることに、自分でも信じられない気持ちと、今まで関わってくださった方々へ、心からの感謝の気持ちでいっぱいです。
最終回に皆さんへ、「どうか、あきらめないで、道は必ず未来へつながっている」と送りたいと思います。
長い連載を読んで下さり、本当にありがとうございました。
未来が怖い、という気持ち
「この先、自分はどうなるんだろう」
「大人になったって、うまくいかない気がする」
「夢? そんなの持ったことない」
生きづらさを抱えた子供たちにとって、“未来”という言葉は、決して希望だけを意味しません。
むしろ、「どうせダメに決まっている」「失敗するのが怖い」と感じてしまうことの方が多いのです。
未来を信じるには、過去や現在の自分をある程度受け入れられていることが前提になります。
でも、これまで否定や挫折の中で生きてきた子供たちは、自分の経験や存在に肯定感を持てず、未来を考えること自体に強い不安を感じます。
だからこそ、子供が「未来を考えても大丈夫」と思えるようになるまでのプロセスは、とてもゆっくりで、個人差が大きいのです。
それでも、確かに言えるのは――
「いまを安心して過ごせるようになった子は、必ず“その先”を見始める」ということです。
「希望」は押しつけるものではなく、芽生えるもの
大人はときに、「この先どうしたい?」「将来の夢は?」と子供にたずねたくなります。
けれど、まだ気持ちの回復が十分でない子供にとって、それはプレッシャーになってしまうことがあります。
未来の話ができるようになるには、まず、いまこの瞬間に「大丈夫」が積み重なっていくことが必要です。
何かに夢中になれた
自分の考えを誰かに聞いてもらえた
誰かと笑い合えた
自分で選んでやってみた
こうした一つひとつの“いま”の積み重ねが、やがて「この先も何かあるかもしれない」という小さな希望を育てていくのです。
私たちフリースクールの現場でも、最初は「何もしたくない」と言っていた子が、
数ヶ月後には「この作業はやってみようかな」「高校ってどんなところ?」と、自分から未来のことをぽつりと語り始める姿を何度も見てきました。
これは、本人の中に芽生えた「変化したい」という内発的な動きであり、誰かに言われて生まれるものではありません。
この時期に大切なのは:
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「将来=進学・就職」だけで考えない
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子供の言葉にならない関心に寄り添う(例:ネット、ゲーム、動物、ものづくりなど)
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可能性を「狭めない」こと。けれど「押しつけない」こと。
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「あなたなら、どんな道でも大丈夫」という信頼を、先回りして伝えておくこと
子供が未来について語り始めた時、たとえそれが曖昧でも突拍子なくても、「そう思えるようになったこと」そのものが、大きな意味を持ちます。
希望は、「自分を信じる力」と共に育つ
未来への希望とは、「こうなりたい!」という明確な夢だけを指すものではありません。
「いつか、自分にも何かできるかもしれない」
「これから、ちょっと変わっていけるかもしれない」
そんなあいまいで、でも確かな「感じ」こそが、希望の芽です。
そしてその芽は、これまで積み重ねてきた――
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安心できる環境
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否定されない関係性
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自分の気持ちへの理解
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失敗しても大丈夫な経験
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特性やスタイルへの気づき
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自分の存在価値への納得
こうした経験の土壌の上に、やっと芽吹いてくるものです。
未来を信じられなかった子供が、少しずつ「自分を信じてみようかな」と思えるようになる。
その瞬間に立ち会えることは、支援に関わる私たちにとって、何よりのよろこびです。
ここまで7つのテーマにわたって、生きづらさを抱える子供たちが「自分を取り戻していくプロセス」についてお伝えしてきました。
どれも、一足飛びにはいかず、揺れ戻りもあって当然です。
けれど一人ひとりの歩みの中に、「回復」は必ず存在しています。
子供が変わるというより、子供が「本来の自分」に戻っていくようなイメージです。
支える私たち大人も、完璧でなくていい。
迷いながら、寄り添いながら、共に歩む存在であることに、何よりの意味があるのだと思います。
この連載が、子供たち自身、そして彼らと共にいるご家族・支援者の方々にとって、小さな灯りとなれれば幸いです。
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