
「学校に行けない」「人とうまく関われない」「自分が嫌い」
そんな言葉を抱えている子供たちと、私たちは日々出会っています。
それは、甘えでも、怠けでもありません。
そして、ほんの一時的な「問題」でもありません。
子供たちが感じているのは、もっと深いところにある「生きづらさ」です。
その生きづらさの正体は、過去の失敗体験や否定された経験、周囲の理解のなさ、自分の特性への違和感など、さまざまな要因が複雑に絡み合ったもの。
「自分はこの世界に合っていないのでは」と感じてしまうほどに、傷ついてきた子供たちもいます。
けれど私たちは知っています。
どんなに小さくても、「変わりたい」「安心したい」「自分を好きになりたい」という願いが、子供たちの心の奥にちゃんとあることを。
だからこそ私たちは、その小さな願いに耳を澄まし、そっと寄り添うことから始めます。
「自分なんていない方がいい」と感じていたあの頃
「どうせ自分なんて…」
「いない方がましでしょ?」
そんな言葉を、子供たちの口から聞くことがあります。
それは単なる甘えではありません。
多くの場合、「長い時間をかけて積み重なった“自己否定の結果”」なのです。
失敗体験、叱責、孤立、不理解。
そうした日々をくぐってきた子供たちは、自分の存在そのものに「価値がない」と思い込んでしまうことがあります。
そしてその心の奥底には、「誰にも必要とされていない」「誰からも大切にされていない」という深い孤独感が横たわっています。
では、そんな子供たちが再び、自分の価値を感じられるようになるには、どうしたらいいのでしょうか。
「何かができるから価値がある」わけじゃない
私たちは、知らず知らずのうちに「できること=価値」と考えてしまいがちです。
・勉強ができる
・人と上手に話せる
・空気が読める
・集団でちゃんとふるまえる
でも、こうした“条件付きの価値観”は、子供たちの心にプレッシャーと劣等感を生み出します。
本当に必要なのは、「何かができなくても、あなたには価値がある」と伝えてくれる関係です。
それは、「存在の価値(Being)」を認める視点です。
たとえばフリースクールでは、子供が何もしていなくても、こう伝えます:
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「今日、来てくれてうれしいよ」
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「そこにいてくれるだけで、場があたたかくなるよね」
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「この場所にあなたがいると、ちょっと安心する」
こうした言葉は、“行動”ではなく“存在”そのものへの承認です。
そしてこの存在承認は、心理学でいう「無条件の肯定的関心(Unconditional Positive Regard)」にあたり、自己肯定感の土台を育てるうえで非常に重要な関わり方です。
また、「自分には誰かの役に立てる瞬間がある」と感じることも、価値の実感につながります。
それは、特別な才能や成果でなくてもよく、たとえば:
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友達に声をかけてくれた
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一緒に片づけをしてくれた
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困っている子のそばに静かに座っていた
そんなさりげない行動の中にも、「あなたがいてくれてよかった」が宿っているのです。
誰かに受け入れられた経験が、自分の価値を育てる
人は、誰かとの関係の中で「自分の存在価値」を感じられるようになる生きものです。
特に子供にとっては、「あなたが大切だよ」と言ってくれる大人の存在が、自分自身を肯定する力を育てます。
たとえ過去にどんな経験をしてきたとしても、
いま、「あなたがここにいることが、うれしい」と伝えてくれる人がいれば、子供はもう一度、自分を信じ直すことができます。
「できたね」ではなく、「いてくれてありがとう」と言ってくれる人。
その存在こそが、子供の回復と成長の一番の栄養になります。
次回は、こうした価値の実感が生まれたあとに必要な、「未来への小さな希望を持つ」というテーマについてお話しします。
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