
「自分で自分が大嫌い」。大人になって、考えてみれば、昔の自分はとてもかわいそうだったなと思います。人と比べ、できないことを誰かのせいにして、自分を痛めつけていたんだなと、今は思えます。
苦しみや悩みは人それぞれ違います。人と比べるよりも、できなかったことができるようになった、そんな自分を抱きしめて、自分を愛することができるまで、時間はかかりますが、必ず光がさす時がやってきます。
今は暗闇の中にいると感じていても、助けてくれる存在は案外そばにあるものです。光を信じて、怖くても一歩ずつ前へ、進めるよう願っています。
「なんでみんなと同じようにできないの?」
「どうして自分だけできないんだろう」
「ほかの子はできているのに、なんで自分はダメなんだろう」
そんな言葉を、何度も子供たちの口から聞いてきました。
“自分を責める癖”の根っこには、「他人と違う=悪いこと」という思い込みが深く根づいています。
けれどそれは、本当に“できない”からではなく、「合っていない方法を、無理に続けてきた」結果なのかもしれません。
私たち一人ひとりに、得意・不得意があるように、子供たちにもまた、感じ方・考え方・学び方のスタイルがあります。
「みんなと同じように」ではなく、
「自分に合ったやり方を知る」こと――
それは、自己理解の第一歩であり、生きづらさを軽くしていくための重要な鍵です。
特性は「困ったもの」ではなく「理解すべきもの」
発達障害、HSP/HSC、愛着障害、グレーゾーン、トラウマ……
さまざまな背景をもつ子供たちがフリースクールには通っています。
私たちがいつも大切にしているのは、「その子の困りごとの奥に何があるのか」を理解しようとする姿勢です。
たとえば――
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集団での活動が苦手 → 聴覚過敏や感覚統合のしづらさ
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何度言っても忘れる → ワーキングメモリの容量が少ない
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感情の起伏が激しい → 自己調整力の発達の段階が異なる
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人との距離感が近すぎる/遠すぎる → 社会的スキルの学習が未経験
これらは、「性格」や「わがまま」ではなく、特性として存在しているものです。
支援者や保護者がその子の特性に気づき、「本人にとっての理解しやすい言葉」でフィードバックしていくことが、子供の安心や納得につながります。
また、子供自身が「自分は何が苦手で、何が得意なのか」「どんな環境なら安心できるのか」を少しずつ知っていくことは、「自己理解(Self-awareness)」の育成でもあります。
たとえば:
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文字を読むのが苦手 → 音声教材や動画を使う
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黙っているのが苦しい → 作業しながら聞くスタイルを許可する
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手が動かないと不安 → 小さなアイテムで手を動かしながら集中する
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同時に複数のことをこなすのが苦手 → シングルタスクで1つずつ
このように、「〇〇が苦手」→「じゃあ△△という方法はどう?」という対話を繰り返すことで、「できないことが」「工夫できること」に変わっていきます。
特性を知ることは、自分を受け入れることにつながる
「どうして自分はこうなんだろう」と苦しんできた子供たちが、
「ああ、そういうことだったんだ」と自分の特性に気づくことで、
少しずつ自分を嫌わなくなっていきます。
それは、まさに自己理解から始まる「自己受容(Self-acceptance)」のプロセスです。
周囲の大人が「こういう特性があるよ」と伝えるときに大切なのは、
“弱点”としてではなく、その子らしさの一部として伝えることです。
「あなたは、音に敏感なんだね。だから静かな場所が落ち着くんだね」
「早く切り替えるのは苦手だけど、じっくり考える力があるよね」
そうやって言葉を重ねていくことで、
「自分にはこんな一面がある」「それでもいいんだ」と、子供は少しずつ自分を肯定できるようになります。
次回は、こうした特性理解のあとに育っていく「自分の存在価値を感じる」ことの大切さについて、お伝えしていきます。
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