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発達の視点から見る不登校と発達障害:ピアジェとボウルビィの理論を手がかりに

不登校や発達障害の問題は、単に「やる気がない」「わがまま」「育て方のせい」といった表面的な理解では解決しません。
そこには、子供の発達のリズム人との関わりの質が深く関わっています。

この記事では、発達心理学の代表的理論であるジャン・ピアジェジョン・ボウルビィの考え方を手がかりに、不登校や発達障害の背景にある「発達の課題」について考えてみたいと思います。




はじめに

不登校や発達障害の背景には、個人の特性だけでなく、発達の過程や周囲の環境との相互作用が関係しています。そうした子供たちに対する理解を深めるためには、「いま、どのような発達段階にあるのか」「どのような関係性のなかで育ってきたのか」といった視点が欠かせません。この記事では、発達心理学の基礎理論であるジャン・ピアジェの認知発達理論と、ジョン・ボウルビィの愛着理論を手がかりに、不登校や発達障害を捉え直してみます。


ピアジェの認知発達理論と不登校・発達障害

ジャン・ピアジェは、子供の認知が段階的に発達していく過程を理論化しました。彼は、子供が自ら環境に働きかけることで思考を深め、次第に抽象的な思考へと至ると考えました。

ピアジェが示した主な発達段階は以下の通りです:

・感覚運動期(0〜2歳):感覚と運動を通して世界を理解する

・前操作期(2〜7歳):直感的・感情的に物事を捉える

・具体的操作期(7〜11歳):具体的な物や出来事について論理的に考える

・形式的操作期(11歳〜):抽象的な思考が可能になる

現代の学校教育は、多くの場合「形式的操作期」に達していることを前提に組み立てられています。しかし、発達障害をもつ子供たちの中には、この段階にまだ十分達していない子もいます。たとえば、抽象的なルールの理解が難しかったり、多角的な視点をもつ(脱中心化)ことが難しかったりするため、学習活動や集団生活で困難を感じることがあります。

このような場合、「できない」「さぼっている」と見るのではなく、「その子は今、どの発達段階にいて、何に困っているのか?」と考えることが、理解と支援の第一歩になります。


ボウルビィの愛着理論と不登校・発達障害

ジョン・ボウルビィは、乳幼児期の養育者との関係(愛着)が、その後の人間関係や心の安定に大きな影響を与えるとしました。子供にとって「安全基地」となる存在があることで、安心して探索活動(学びや社会的挑戦)に取り組むことができます。

不登校の背景には、この「安全基地」が不安定であることが少なくありません。家庭や学校などの対人関係で安心感をもてず、不安や自己否定感が高まった結果、登校することが大きなストレスとなっているケースがあります。

発達障害のある子供は、感覚過敏やこだわり行動、社会的コミュニケーションの困難さなどの特性によって、周囲との関係がうまくいかず、愛着形成に時間がかかることもあります。支援者や親が「この子にとっての安心」を丁寧に築いていくことが、心の回復と行動の安定につながっていきます。


「発達の今」に寄り添う視点を

ピアジェの理論は、子供を「自ら世界を理解しようとする存在」として尊重しました。そして、ボウルビィは「安心できる関係の中でこそ、子供は伸びていく」と説きました。

不登校や発達障害を考えるとき、診断名や行動の問題点に目を奪われがちですが、発達心理学は「その子の発達の物語」を読み解く手がかりを与えてくれます。

「できる・できない」ではなく、「今どこにいて、何に困っているのか?」という発達の視点をもつことが、その子らしい学びや暮らしを支える大きなヒントになります。


おわりに

不登校や発達障害への理解は、個人の特性だけでなく、発達の段階とその環境との相互作用を読み解くことが鍵です。ピアジェやボウルビィの理論は、その子の「今」に目を向け、「どうすれば安心して次の一歩を踏み出せるか?」を考える道しるべになります。

発達の視点から、子供たちの困りごとを“発達の課題”として見直すことで、支援も関わり方もぐっと深まっていくのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

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