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発達課題と子供の困りごと:ハヴィガーストとエリクソンの視点から不登校・発達障害を考える

「どうしてうちの子は学校に行けないの?」「発達障害と診断されたけれど、これからどう育てていけばいいの?」子育てのなかで、こうした悩みを抱える方は少なくありません。子供たちは皆、それぞれのペースで成長しており、今はその歩みが一時的に止まっているように見えても、実は見えないところでたくさんのことを感じ、考えています。

子供を理解し支えるためには、「なぜ今この子が困っているのか」を見つめ直すことが大切です。その手がかりとなるのが、ハヴィガーストとエリクソンという2人の心理学者による発達理論です。本記事では、これらの理論をもとに、不登校や発達障害のある子供たちへの理解と支援のヒントを探っていきます。




なぜ発達理論が今、重要なのか?

現代の子供たちは、多様な背景や特性をもって育っています。不登校や発達障害といった課題も、決して特別なことではなく、身近な問題になっています。こうした子供たちの「今」をどう理解し、どんな支援ができるのかを考えるために、発達理論が大きなヒントになります。発達とは単なる成長ではなく、「人がその時期に求められる課題にどう向き合い、乗り越えていくか」の過程です。


ハヴィガーストの発達課題理論とは?

ハヴィガーストは、人間のライフステージごとに達成すべき「発達課題」があると提唱しました。たとえば、児童期には「仲間との協調」「読み書き計算の習得」「良い習慣の形成」などが課題とされます。

この課題が達成できると、次の段階へスムーズに進むことができますが、何らかの理由でうまくいかないと、後の成長段階に影響が出るとされます。発達障害のある子供は、感覚過敏や注意の偏りなどにより、この課題をこなすのが難しい場合があります。不登校も同様に、学校という社会でこの課題に向き合うことが困難なケースです。


エリクソンの心理社会的発達理論とは?

エリクソンは、人間の発達を「心理社会的な葛藤」としてとらえました。各ライフステージで「信頼 vs 不信」「自主性 vs 恥・疑念」「勤勉性 vs 劣等感」などの葛藤を経験し、それを乗り越えることで健全な人格が育つとされます。

たとえば、小学生は「勤勉性 vs 劣等感」の時期にあたり、「何かを成し遂げる」ことで自己肯定感を育てます。しかし、学習や対人関係で困難を感じると、劣等感に傾きやすくなり、「自分はダメだ」と感じてしまうこともあります。発達障害の特性や不登校の経験が、この葛藤を乗り越える力に影響を与えることは少なくありません。


ハヴィガーストとエリクソンの比較:何が違い、何が補い合うか?

ハヴィガーストは「社会的に期待される課題の達成」に焦点を当て、エリクソンは「内面的な葛藤と成長」を重視しています。前者は“外からの目”、後者は“内なる心”と言えるかもしれません。

両者を補完的にとらえると、子供の行動の背景が立体的に見えてきます。たとえば、発達課題に取り組めない背景には、心理社会的な葛藤があるかもしれません。逆に、外的な課題の成功体験が、内面の自信や安心感につながることもあります。


発達障害・不登校との関連性

発達障害のある子供は、神経発達の特性により「環境に合わない」経験を積み重ねがちです。ハヴィガーストの視点では、発達課題をこなせないことで社会的な遅れを生じやすく、エリクソンの視点では、失敗体験から自己不信や劣等感が育ちやすくなると考えられます。

不登校の背景にも、発達課題に対する過剰なプレッシャーや、自己評価の低下が関係していることが多く見られます。「できていない=遅れている=将来が不安」と見るのではなく、「今はその課題に取り組める状態ではない」と考える柔軟な見方が必要です。


支援の視点:子供が「課題をこなす」前に必要なこと

子供が課題に向き合うには、まず「安全・安心な環境」と「自分はできるかもしれない」という期待感が必要です。支援者や親は、まず子供が「大切にされている」と感じられる関係を築くことから始めましょう。

発達理論は、子供を“評価する”ためのものではなく、“理解し、支える”ためのツールです。課題の達成ばかりを追い求めるのではなく、「今はまだその課題をやらなくていい」選択肢もあってよいのです。


理論を知ることで、子供の見え方が変わる

ハヴィガーストもエリクソンも、子供は“発達のプロセス”の中にいることを教えてくれます。一見すると「遅れている」「できていない」ように見える子供も、自分のペースで成長しています。

発達理論を知ることで、子供に向けるまなざしはきっと変わります。焦らず、比べず、今のその子を大切にすること。そこから始まる支援が、子供たちの未来を明るくする一歩になるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

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