
発達障害のあるお子さんを育てる日々は、時に終わりの見えない道のように感じることがあります。「この子が一人で生きていける日は来るのか」「自分がいなくなった後はどうなるのか」――そんな不安を抱える保護者の方は少なくありません。
今回は、「子育てが終わる」とはどういうことかを見つめ直し、発達障害のある子供を育てる親として、どのように将来を考えていけるのかを一緒に考えてみたいと思います。
子育ての「終わり」は「卒業」とは違う
健常発達の子育てでは、18歳や成人、就職・結婚などが「子育ての終わり」とされがちです。しかし、発達障害のあるお子さんの場合、年齢だけで「親の役割が終わる」とは言い切れません。生活面や社会的スキルの支援が長期的に必要となるケースもあります。
精神保健福祉士や発達障害支援専門員などが関わる場面では、「ライフステージに応じた支援の継続」が重視されています(参考:厚生労働省「発達障害者支援施策の現状」)。
つまり、子供の発達や状況に応じて、「親の関わり方が変わっていく」ことが“子育ての終わり”に近いと言えるのです。
親の役割は「支援者」から「伴走者」へ
子供が小さい頃は、親がすべての場面でサポートする必要があります。ですが、思春期や青年期に入ると、親が少しずつ「支援者」から「伴走者」へと役割を変えていくことが大切です。
ここで重要なのが、自己決定の機会を保障すること。支援の場面では「本人中心の支援(Person-Centered Planning)」という考え方があり、本人が自分の将来を選べるよう支えることが求められます(出典:日本発達障害ネットワーク)。
そのためにも、親が一歩引いて、子供自身が「決める」「失敗する」「経験する」機会を増やしていくことが、将来的な自立につながります。
未来への備え:「親なきあと」の準備
保護者が最も心配するのが、「自分がいなくなった後、この子はどうやって暮らしていけるのか」ということではないでしょうか。
以下のような準備を早い段階から考えていくことが大切です:
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福祉制度の活用(障害福祉サービス、成年後見制度、グループホーム等)
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就労支援機関との連携(就労移行支援、就労継続支援など)
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財産管理や生活設計の相談(信託制度、親なきあと相談会の活用)
最近では「親なきあと相談室」や「成年後見制度利用支援センター」など、専門の相談窓口も増えています。孤立せず、信頼できる専門家とつながることが安心につながります。
「終わり」を考えることは「希望」を描くこと
「子育てが終わる日」は、けっしてすべての責任から解放される日ではありません。でも、それは「子供の人生が親の手を離れて、自分の力で歩き出す日」でもあります。
発達障害のあるお子さんにとっても、「自分らしく生きる未来」は存在します。そこに向かって少しずつ歩んでいくために、親としてできることはまだまだたくさんあります。そして、「完全に手を離す」のではなく、「上手に手をゆるめていく」ことが、子育ての新たなステージなのです。
最後に
あなたが日々注いできた愛情と支援は、必ずお子さんの中に積み重なっています。子育ての終わりは「関係の終わり」ではなく、「形が変わること」。
今すぐに答えが出なくても大丈夫。必要なのは、焦らず、段階的に、「未来を一緒に考えてくれる人」とつながることです。
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