オルタナティブ教育とは、国や市が運営する小中学校とは異なる独自の理念やカリキュラムに基づいて民間の教育機関が行う教育メソッドのことです。
これを行う機関をオルタナティブスクールと呼び、日本では一条校(学校教育法により定められた教育機関)以外の学校を指す言葉としても使われます。
しかし、本来の意味でのオルタナティブスクールは完全な意味で学校を代替するものであり、そこに通う子供たちは学校教育の機会をオルタナティブスクールに一任します。
つまり、オルタナティブスクールの生徒たちは所定の期間、国の運営する教育機関にはほとんど通わずオルタナティブスクールにのみ通学することになる訳です。
小学校・中学校とは全く違うオルタナティブスクール
オルタナティブスクールはそれぞれが持つ教育論に基づいた目標を掲げ、生徒がそれを実現するための教育を施します。
子供たちが受けるオルタナティブ教育の内容は学校毎に違ったものになります。当然、小中学校のカリキュラムとも異なるため、独自性が高くユニークなものが多く見受けられるのが特徴です。
主だったオルタナティブ教育の種類としては以下の7つが挙げられます。
1.モンテッソーリ教育
イタリアの医学博士マリア・モンテッソーリが考案した教育メソッドで、子供が生まれつき持っている自己教育力(自立・発達していく力)を発揮させるための環境を提供します。
幼児期から教育を開始し、子供が成人になるまでの間に発生する「敏感期」(ある特定の能力が伸びやすい時期)に合わせた学びを行うことで効率の良い成長を促すのが特徴です。
モンテッソーリ教育には自立、積極性、集中力、安定した情緒という4つの能力を育む効果があるとされており、どちらかと言えば内向的な性格の子供に適していると言われます。
元は知的障害児の知能向上を目的として考案された教育法ですが、現在では早期教育の手法にも用いられており、マイクロソフトの創設者ビル・ゲイツや第37期竜王藤井聡太棋士といった時代の寵児たちもモンテッソーリ教育を受けていたと言われています。
2.ドルトンプラン教育
アメリカの教育者ヘレン・パーカーストが提唱した教育メソッドで、モンテッソーリ教育の流れを汲んでいます。幼児から高校生までの幅広い年齢の子供を対象とします。
生徒の興味を出発点に自主性と創造性を育む「自由」と多様な価値観に触れて社会性と協調性を育む「協働」、これら二つの原理を基本に子供たちが自立するために必要な能力を育成することを目標とします。
このモデルの特徴は「ハウス」「アサイメント」「ラボラトリー」という3つの柱を強調している点にあり、中でも生徒と先生が個人間で課題の提出期限に関する約束を交わすという「アサイメント」は非常に特徴的なシステムだと言えます。「アサイメント」により生徒は課題を期限内にこなすために必要な計画性を身につけられ、契約が履行されたか否かによって先生からも生徒の実能力が見えやすくなるというメリットがあるようです。
3.サドベリー教育
生徒が学内での選挙活動により役員を選出して学校を運営するという、アメリカのサドベリー・バレー・スクールを参考に作られた教育メソッドです。対象となる年齢が幼稚園児から高校生までと非常に幅広いのも特徴の一つに挙げられます。
サドベリー教育においては、生徒自身が話し合いによって学校の運営ルールを作り、ルールに逸脱しない範囲であれば学校内で好きなことをして過ごしても良いという、極めてユニークな環境下で学校生活を送ります。
ここで言う運営ルールには基本的な校則、予算、スタッフの雇用に解雇、年の学費、そして学内のルール違反に対する罰則といった司法権の行使までもが含まれます。
(ただし、日本におけるサドベリー教育機関では生徒の裁量を監督する大人が制御可能なレベルに調整することが大半なようです)
このモデルは生徒の自主性を最大限に重視しているので出席も完全に自由、たとえ卒業までに一度も学校に来なかったとしても問題は無いとしています。
4.イエナプラン教育
ドイツの教育学者ペーター・ペーターセンが考案し、オランダで広く浸透した教育メソッドです。日本では主に幼稚園児から中学生までの子供を対象としています。
イエナプラン教育は「20の原則」と呼ばれるルールに基づいて、子供たちに他者を尊重し秩序を重んじることの重要性を説きつつ、対話や批判的思考などロジカルな能力を獲得させることを目指します。
この教育メソッドにおいては学校そのものが一つの集団と見做されることから、年齢の異なる子供同士の積極的な交流が推進されるようです。
5.レッジョ・エミリア教育
イタリアのレッジョ・エミリア市に住む市民たちによって考案された教育メソッドで、乳幼児の時点から教育を始めます。
レッジョ・エミリア教育において子供たちは無知で弱い存在ではなく、一人一人を「好奇心と可能性に満ち、成長欲求に溢れる立派な人間」と捉えて、その創造性が最大限に発揮されることが至上とされます。
このモデルでは子供たちの興味から自然発生する疑問をプロジェクトとして昇華し、数人からなるグループを作って探求する試みを通じて、子供に自主性・協調性・想像力を養う機会を与えます。その過程で自分の意見が他の子供に否定されたり、別の意見と衝突することを子供たちにとっての糧とみなし、それによって養われる他者との交渉能力を評価します。
6.フレネ教育
フランスの教師セレスタン・フレネが創始した教育メソッドで、「自由作文」と呼ばれる特徴的な教材が学習の中心となります。
生徒たちが見聞きしたものを自由に綴った「自由作文」はクラス内で発表・批評され、最も優れたものは印刷してクラス内で配布されて共通の教科書として用いられます。この仕組みは生徒自身を学習の主体に据えて自発的な学習を促すほか、他者と共に学ぶ喜びを通じて協同性を育むといいます。
また生徒たちは学校協同組合という自治組織に属し、生徒たちは自身らの決定によって学校やクラスを運営し、教師たちはそれに随伴する者として生徒たちをサポートします。こういった一連の活動は学校間通信という印刷物となって、他校との交流に用いられるようです。
そのためフレネ教育を受けた子供は情報発信・共有に対する意欲が旺盛で、表現力に優れると言われます。
7.シュタイナー教育
オーストリアの思想家ルドルフ・シュタイナーにより提唱された教育メソッドです。
教育と芸術を強く結びつけており、最終的には子供が自由な自己決定をできるようにすることを目標としています。
ただし、このモデルの下地には人智学という非常に難解な思想が存在しているため、一部有識者は全貌を理解・説明するのが難しいと論じています。
日本におけるオルタナティブ教育
もともとオルタナティブ(Alternative)という言葉には「代替」「二者択一」という意味合いがあり、オルタナティブ教育を行う施設・機関についても「既存の教育機関に代わるもの」という位置付けが為されています。
そのため日本においてはこれを拡大解釈し、国や市区町村が運営する一条校を除く学校全般をオルタナティブスクールと呼び、ここで行われる教育をオルタナティブ教育として扱います。
つまり上記に挙げた7つの教育メソッドいずれかを採用しているかどうかは関係なく、不登校支援を目的としたフリースクールや、校内では英語を公用語として全ての授業を行うインターナショナル・スクール、家庭内で学習を行うホームスクーリングなどの場で行われる授業や取り組みを全部まとめてオルタナティブ教育と呼称しているわけです。
筆者は本来の意味でのオルタナティブ教育を「個性を伸ばすための早期教育」として考えますが、日本ではどちらかというと「子供の個性に合わせた個別指導」を全部ひっくるめてオルタナティブ教育と定義しているように思われます。
なお文部科学省はオルタナティブ教育およびオルタナティブスクールの定義については特に明言していないので、日本国内においてオルタナティブ教育という言葉はある種の俗語に近い使われ方をしているのが実情であるように思われます。
オルタナティブ教育のデメリット
親御さんの中にはご自身のお子さんにもオルタナティブ教育を受けさせたいと思う方もいらっしゃるかもしれません。しかし、先の項で申し上げた通り日本におけるオルタナティブ教育の定義は曖昧であり、子供に何も学ばせるつもりがない個人や団体が「うちはオルタナティブ教育を取り入れています」と喧伝するケースが後を立ちません。
そういった殊更に酷いものを除外しても、実際に通ってみないと分からないこともあります。オルタナティブ教育は「子供の個性に合わせた教育を行う」という特性上、画一的なカリキュラムを組むことが難しく、具体的にどんな取り組みを行うのか体験してみないと分からないことも多いです。
そのためオルタナティブスクールの検討時には、スクールの下見や体験学習に参加し、本当に子供に合った環境や教育機会が提供されるのかしっかりと見極めなくてはなりません。スクール選びは時間をかけて、慎重に行う必要があります。
オルタナティブ教育の是非
現在も国内外でオルタナティブ教育を巡る議論が交わされており、その是非についての答えは出ていません。
もしお子さんに対して本格的なオルタナティブ教育を検討されているようでしたら、決断の前に十分、メリットとデメリット、コストが適切かどうかを見極めることが大切です。
そのうえで、お子さんが将来どのように伸び、どのように生きていくのかを丁寧に思い描きながら、最適な選択をしていただければと思います。
そして,もし「まずは学び直しや居場所づくりから始めてみたい」「学校以外の場でお子さんのペースを大切にしたい」と感じられた場合には、ステラBASEも一つの選択肢としてご検討いただけたら幸いです。
お子さんが自分らしく学び、次の一歩につながる環境を、私たちが一緒にサポートいたします。
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