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発達性協調運動障害DCDの特徴と困りごと支援の考え方

「どうしてうちの子だけ、こんなに運動が苦手なのだろう」「努力していないわけではなさそうなのに、なかなか上達しない」そんな思いがよぎるとき、保護者の方はつい「本人のやる気の問題なのではないか」「もう少し練習すればできるようになるのでは」と考えてしまうこともあるかもしれません。周囲の子どもたちが当たり前のようにできている動きを前にすると、比べるつもりがなくても差が目に入り、戸惑いや不安を感じてしまうこともあるでしょう。ときには、どう声をかけたらよいのか分からず、悩んでしまう場面もあるかもしれません。けれど実は、運動の得意・不得意の背景には、意欲や根性、努力の量だけでは説明できない理由が関係している場合があります。本人なりに一生懸命取り組んでいても、体の動かし方やタイミングをうまくコントロールすること自体に、見えにくい難しさを抱えていることがあるのです。

 

今回は、そうした「運動が思うようにいかない」状態の一因として考えられる、発達性協調運動障害(Developmental Coordination Disorder:DCD)について、その特徴や背景を交えながら、できるだけ分かりやすく解説していきますので、ぜひご一読ください。

 

発達性協調運動障害とは?

発達性協調運動障害(DCD)は、発達障害の一つとされています。脳性麻痺や筋疾患、神経の病気といった明確な身体疾患がないにもかかわらず、体の動きを思うようにコントロールすることが難しい状態を指します。力が弱いわけでも、知的な理解力が低いわけでもないのに、「頭では分かっているのに体がうまく動かない」「思った通りに動かせない」といった特徴が見られるのが、大きな特徴です。

 

日常生活で現れやすい困りごと

そのため、走る・跳ぶ・投げるといった運動だけでなく、文字を書く、はさみを使う、ボタンを留める、靴ひもを結ぶといった日常的な動作にも、思いがけない難しさを感じることがあります。本人は一つひとつの動作に集中して取り組んでいても、周囲と同じペースで進めることが難しく、疲れやすくなる場合もあります。

 

周囲から誤解されやすい「見えにくさ」

日常生活の中では、こうした困難さが外からは分かりにくいため、周囲からは「不器用な子」「運動が苦手なだけ」と受け取られてしまうことが少なくありません。その結果、「もっと練習すればできるはず」「集中していないのでは」と、本人の努力不足や意欲の問題と誤解されてしまう場面も見られます。しかし実際には、本人なりに一生懸命取り組んでいるにもかかわらず、思うように結果につながらないという、もどかしさを抱えていることも多いのです。

 

他の発達特性との併存について

発達性協調運動障害は単独で見られる場合だけでなく、ADHDやASDなど、他の発達特性と併せて見られるケースもあり、困りごとが複雑になりやすい傾向があります。

 

発症の背景と現在の考え方

発症の背景については、脳の情報処理や身体感覚の統合の仕方など、さまざまな仮説が示されていますが、現時点では原因が一つに特定されているわけではありません。ただし近年では、発達性協調運動障害に対する理解が進み、診断基準や定義の整理、チェックリストや評価尺度の整備が進められてきました。そのため、専門家による評価を通して、単なる「運動が苦手」という見方にとどまらず、その子どもが抱えている特性の有無や支援の必要性を、より丁寧に把握できるようになってきています。

 

 

年齢ごとに現れやすい特徴

 

乳幼児期に見られる特徴

・寝返りやはいはい、歩き始めるまでにやや時間がかかることがある

・授乳の際にむせやすい場面が見られる

・座っているときに姿勢が安定しにくいことがある

 

幼児期に気づかれやすい様子

・塗り絵やお絵かきで、手の動かし方に戸惑う様子が見られる

・スプーンやコップを使う動作に時間がかかることがある

・三輪車やボール遊びなど、体を使う遊びが少し難しく感じられる

 

学童期に困りやすい場面

・体育の授業で動きを合わせることに負担を感じやすい

・文字を書くのに時間がかかったり、疲れやすかったりする

・着替えや給食の準備など、日常動作に時間を要することがある

 

発達性協調運動障害の特徴は、成長とともに現れ方が変化していきます。乳幼児期には動きのぎこちなさとして、幼児期には手先や体を使う活動の難しさとして、学童期には体育や書字、身支度など、集団生活の中での困りごととして気づかれることが多くなります。こうした様子は、努力不足ややる気の問題ではなく、年齢に応じて求められる動作が高度になることで、特性が目立ちやすくなっている場合があります。本人は一生懸命取り組んでいても、うまくいかない経験が重なることで、自信を失ったり、挑戦を避けるようになったりすることもあります。そのため、「できないこと」だけを見るのではなく、背景にある特性やその子なりの頑張りに目を向けることが大切です。早めに気づき、環境や関わり方を工夫することで、子どもが安心して成長できる土台につながっていきます。

 

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発達性協調運動障害のチェックリストについて

年齢によって用いられる評価方法は異なります。

たとえば5〜6歳の子どもを対象とした
CLASP(Check List of obscure disAbilitieS in Preschoolers)には、
発達性協調運動障害に関連する項目が含まれています。

以下はその一部です。

 

・走り方がぎこちなく、動きが不自然に見える

・遊具や身体を使う遊びがうまく進められない

・描きたいものは思いついているのに、手の動きが追いつかない

・描いた絵が意図した内容として伝わりにくい

・長時間座っていると姿勢が崩れやすい

 

これらを5段階で評価し、一定の基準を満たす場合、
全体的な発達の遅れや知的障害がないことを前提に、
高い確率で発達性協調運動障害の可能性が示唆されるとされています。

なお、海外では
MABC-2 や BOT-2 といった検査も用いられていますが、
現時点では日本語版が整備されていないため、国内で使われる機会は限られています。

インターネット上のセルフチェックも見かけますが、
判断に迷う場合は、自己判断せず専門医に相談することが大切です。

 

運動のつまずきが心に与える二次的な影響

発達性協調運動障害では、運動そのものの難しさ(一次的な特性)よりも、
その経験を重ねる中で生じる二次的な困りごとが、心の負担となることがあります。

「周りと同じようにできない」「思うようにいかないことが続く」といった体験は、
周囲の理解不足や、意図しない言葉につながってしまうこともあります。
一生懸命取り組んでいても、
「ふざけているのでは」「やる気がないのでは」と受け取られてしまう場面も少なくありません。

こうした経験が積み重なることで、
自分に自信が持てなくなったり、挑戦すること自体を避けるようになったりすることもあります。
その結果として、学校に足が向きにくくなったり、気持ちが落ち込みやすくなったりするケースも見られます。

また、運動への苦手意識が長く続くと、
成長後に運動から距離を置くようになり、生活習慣や健康面への影響が心配されることもあります。

「たかが運動が苦手なだけ」と片付けてしまうのではなく、
その背景にある困りごとや気持ちに目を向けることが、
子どもを支える第一歩になるのではないでしょうか。

 

特性に合わせた支援のアプローチ

発達性協調運動障害の支援で大切なのは、「できない動作を繰り返し練習させること」ではなく、その子の特性に合った方法を一緒に見つけていく視点です。
DCDのある子どもは、努力や意欲があっても、体の動かし方をうまくイメージしたり調整したりすること自体に難しさを抱えている場合があります。

そのため、「なぜできないのか」を問うよりも、「どうすれば取り組みやすくなるか」「どこを工夫すれば負担が減るか」を考えることが重要です。動作を小さなステップに分ける、視覚的な手がかりを増やすなどの工夫は、安心して挑戦するための支えになります。

また、支援の目的は単に「できるようにすること」だけではありません。失敗体験が重なると自己評価が下がりやすいため、結果だけでなく過程や努力に目を向ける関わりが欠かせません。
特性に合わせて環境や関わり方を調整し、「できない自分」を責めずにすむ経験を積み重ねていくことが大切です。

 

家庭でできるサポートの工夫と声かけ

家庭の中でも、ちょっとした関わり方や声かけを意識することで、子どもをやさしく支えることができます。

 

工夫のポイント

・動作を細かく分け、ゆっくり伝える
・成功体験につながるよう、できることから少しずつ取り組ませる
・無理に完璧を求めず、「できたこと」に目を向けて認める

 

声かけの具体例

・「焦らなくて大丈夫。ゆっくりやってみよう」
・「一生懸命取り組んでいるの、ちゃんと伝わっているよ」
・「前よりも少しずつできるようになってきたね」

日常生活の中で、安心してチャレンジできる雰囲気をつくることが、子どもの自信や意欲につながっていきます。

 

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学校生活で大切にしたい配慮の視点

発達性協調運動障害のある子どもにとって、学校生活は「運動」だけでなく、書字や身支度、集団行動など、さまざまな場面で負担を感じやすい環境でもあります。そのため、本人の努力だけに委ねるのではなく、学校側の理解と配慮がとても重要になります。

たとえば体育の授業では、動きの正確さやスピードだけで評価されると、苦手意識が強まりやすくなります。参加の仕方を柔軟にしたり、役割を調整したりすることで、「できないからつらい時間」ではなく、「安心して関われる時間」に変わることがあります。

また、文字を書くことに時間がかかる場合には、板書を書き写す量を減らしたり、タブレット端末の使用を認めたりといった配慮が助けになります。着替えや給食準備などでも、少し時間に余裕をもたせるだけで、本人の焦りや不安が大きく軽減されることがあります。

大切なのは、「特別扱い」ではなく、その子が学びやすく、過ごしやすくなるための環境調整として配慮を考えることです。担任の先生や支援担当の教員と情報を共有し、家庭と学校が連携しながら関わっていくことで、子どもは安心して学校生活を送れるようになっていきます。

 

 

お子さんが運動のことで悩んでいたら

もしお子さんが、
「うまくできなくてつらい」
「みんなと同じようにできない」
と気持ちを打ち明けてくれたときには、その言葉を否定せず、そっと受け止めてあげてください。

運動の苦手さが続き、本人のつらさが大きくなっている場合には、運動発達を評価できる医療機関に相談することも、お子さんを守るための大切な選択肢の一つです。診断と聞くと、不安や抵抗を感じる方も少なくありません。けれども「困っている理由」を知ることは、責めるためではなく、理解し、適切な支援につなげていくための第一歩でもあります。

主な相談先としては、小児科や精神科、心療内科などがあります。どうすればいいか迷ったときは、まずは専門家に話を聞いてもらうところから始めてみてください。

 

学校以外の学びと居場所という選択

発達性協調運動障害による困りごとや、周囲との関係の中で、学校に通うこと自体が大きな負担になってしまう子も中にはいます。「みんなと同じようにできない」「うまくいかない経験が続く」ことが重なると、気づかないうちに心が疲れてしまうこともあります。そんなときには、無理をして今の環境に合わせ続けるのではなく、一度立ち止まり、環境を少し変えてみるという選択も大切です。安心できる場所で過ごし、自分のペースを取り戻す時間は、決して「後退」ではなく、その子にとって必要な調整の時間でもあります。

私たちステラBASEでは、「学校に戻ること」だけをゴールにするのではなく、まずは安心して過ごせること、自分らしさを否定されずにいられることを大切にしています。学習も含め、その子の状態や特性に合わせた関わりを通して、少しずつ自信や意欲を取り戻していくことを支えていきたいと考えています。学校という枠組みに限らず、学び方や居場所にはさまざまな選択肢があります。「ここしかない」と思い詰める前に、ほかにも道があることを、ぜひ知っていただけたらと思います。

 

 

 

 

 

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