
いよいよ、梅雨の時期ですね。
今朝もどんよりとした朝でした・・・
見上げた空からは激しい雨
青空が待ち遠しいですね
声が届かない、聞こえない日々に
「うちの子、何も話してくれない」
「どう関わっていいのか、もうわからない」
「学校に行けない理由すら話そうとしない」
不登校や引きこもり、心の不調がある子供や若者を前にするとき、家族も支援者も、学校も、深い無力感を抱えることがあります。
何を話していいかわからない。
話そうとすると、かえって関係がこじれてしまう。
沈黙が続くと、もう話すこと自体をあきらめてしまいそうになる。
そんなときに注目されているのが「オープンダイアログ」という対話的アプローチです。
フィンランド発のこの手法は、「治す」「変える」ことを急がず、ともに語り合い、ともに考える場をつくることを大切にしています。
この記事では、オープンダイアログの基本的な考え方と、家族・支援者・学校、それぞれの立場でできることについてお伝えします。
オープンダイアログとは何か?
オープンダイアログ(Open Dialogue)は、1980年代のフィンランド・西ラップランドで精神医療の現場から生まれた支援方法です。
特徴は、次の3つ。
① 本人だけでなく、家族や関係者も交えて“対話の場”を開く
一人を「問題の人」とするのではなく、その人を取り巻く環境全体を見つめ直します。
② 決めつけず、評価せず、対等な関係で語り合う
専門家が主導せず、全員が「わからないことをわからないままに語る」自由を持ちます。
③ 沈黙も、迷いも、感情の揺れも、そのまま受け止める
答えを出すより、「一緒に考え続ける」ことを大切にします。
このアプローチの背景には、「人は自分のことを語れるようになるとき、自分を取り戻していく」という深い人間理解があります。
家族にできるオープンダイアログ的関わり方
「親だからこそ、何か言いたくなる」「助けたい」
それは自然な感情です。でも、オープンダイアログでは「答えを与えること」よりも、「一緒にいること」「聞き続けること」を大切にします。
家族ができることは…
・アドバイスや解決策を急がず、「その気持ち、そう感じるんだね」と言葉に返してみる
・無理に話を引き出そうとせず、子供のリズムを尊重する
・会話がなくても、そばにいるだけで“対話”になると信じてみる
・親自身の不安や弱さも、隠さずに共有してみる(=対等な対話)
たとえばこんな声かけも
☓「なんで学校行けないの?」
〇「行けないって感じてるんだね。そう思うようになったのは、いつ頃からなんだろうね?」
支援者にできるオープンダイアログ的関わり方
支援者は、つい「助ける側」として介入しがちです。
でもオープンダイアログでは、支援者もまた「対話に参加するひとり」として、答えを持たずに場をつくる人という立場になります。
支援者が意識できることは…
・一人の子供だけを見るのではなく、家族や学校、生活全体のつながりを意識する
・本人が何を感じているか、言葉になる前の「間」も大切にする
・「わからないこと」をわからないままに共有し、答えを急がない
・立場や肩書きではなく、「一人の人としての自分の声」も対話に乗せる
・「何もできなかった」ではなく、「何かを一緒に考える場が持てた」こと自体に意味があると、信じることが大切です。
学校・先生にできるオープンダイアログ的関わり方
学校現場は、「対応」や「対応策」を求められる場面が多くあります。
でも、ときには「解決しようとしすぎないこと」が、子供にとって救いになることもあります。
学校でできることは…
・本人や家族との対話の場に「聞く人」として参加する姿勢
・教師が「教える人」から「共に考える人」へと意識を変える
・教室以外の場所、時間、方法を柔軟に用意し、対話を支える環境づくり
・「よくわからないけれど、一緒に考えていきたい」という気持ちを、本人に届ける
対話の積み重ねが、学校と家庭の“あいだ”をあたたかくつないでいく第一歩になるはずです。
おわりに:言葉は、力になる
言葉にできない思いが、心の中でぐるぐる回っているとき。
誰かに「わからないけど、一緒に考えていくよ」と言ってもらえることは、それだけで希望になります。
オープンダイアログは、特別な技術ではありません。
「わからないことを、一緒にわからないまま語れる場」
「誰の声も、否定せずに聴かれる場」
そんな場が、家庭に、支援の現場に、学校に、少しずつ広がっていくことで、子供たちが「安心して話せる」場所が増えていきます。
そしてそれはきっと、私たち大人にとっても、「本音で向き合える」新しい希望になるはずです。
【参考・補足】
・オープンダイアログについてもっと知りたい方へおすすめ書籍:
◉『オープンダイアログとは何か』(斎藤環他)
◉『対話で思春期を乗り越える オープンダイアログ的実践のすすめ』
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