子供の部屋が散らかっていると、何度も「さっき言ったでしょ!」「早く片付けなさい!」と
ついついきつい口調で叱ってしまいがちですよね。
でも、実は片付けられないことには理由がある場合があります。
本人の努力不足や怠けではなく、脳の特性によるものと考えることができます。
特に発達障害の一つであるADHD(注意欠如・多動症)では、「集中力が続かない」「優先順位をつけるのが苦手」「作業の手順を整理できない」といった症状で、片付けがうまくできないことがあります。
そして、将来的な不安として、「溜め込み症(ホーディング)」のリスクも考えられます。
幼少期から片付けが苦手な場合、大人になってから物が手放せなくなり、生活が成り立たなくなる場合もあるのです。
今回は「片付けられない理由」と「心のくせ」を専門的な視点で掘り下げてみるのと同時に、家庭でできる対策から、支援や診断を受けるタイミングまでを具体的にご紹介します。
お母さんの悩みに寄り添い、お子さんの未来を一緒に考えるヒントになれば嬉しいです。
ADHDの子供は片付けが苦手?
子供が片付けられないとき、周りは「やる気がない」「だらしない」と思ってしまいがちです。
しかし、ADHDの特性が背景にある場合、「片付けられない」と言うより、「片付けが苦手な脳の働き」と言うことができます。
ADHDには次のような特性があります。
集中力の傾向
片付けをするためには、集中力を継続し、必要なものとそうでない物を自分で考え判断しなければなりません。ADHDの特性のあるお子さんは、目の前の刺激に注意がそれやすく、行動が止まりやすい傾向があります。
例えば、片付けの途中で他のおもちゃなどが目に入った場合、集中力が途切れ、部屋の片付けが止まってしまうこともあるかもしれません。そうなると、本人としては片付けようと努力しているのに、結果が見えず、「自分はできない」という自己否定に繋がってしまう恐れもあります。
実行機能の特性により段取り、整理が苦手
実は片付けは、高度な思考と行動が求められる作業です。
まず、何から始めるか考え、必要なものだけ残して、残ったものを整理して収納するまでを集中して行わなければなりません。
こうした手順をまとめて行う「実行機能」がADHDの特性のあるお子さんでは弱くなっている可能性があり、「優先順位」をつけるのが難しいと思われます。
片付けの中で、どれも大切なものに思えてしまい、「捨てる」判断ができないのです。
さらに衝動性の強いお子さんは気になるものを、あちこち置いて収納場所を決められず、放置してしまったりします。
こうした行動が重なり、部屋の散らかりやすさを助長し、生活の質にも影響を及ぼします。
ワーキングメモリの特性により、情報の保持が難しい
ワーキングメモリとは、短時間の情報を頭の中で保持しながら行動する力です。
ADHDの特性のあるお子さんは、片付け中に「このおもちゃを棚に置こう」と思っても、途中で別のおもちゃが目に入り、最初の目的を忘れてしまうのです。
このループが続くため、片付けが終わらないままの状態になります。
結果として、部屋は片付かず、本人も「なぜ片付けられないのか」と困ってしまうのです。
「視界から消えると存在を忘れる」という特性
収納の中に物をしまい、見えなくなってしまうと、その存在を忘れてしまうのもADHDの特性のひとつです。
注意の向きやすさによるもので、視界にない物を管理する難しさとして挙げられます。
そのため、「出しっぱなし=忘れない」という行動をとるようになり、結果的に物がどんどん積み重なります。
これは将来、「溜め込み行動」につながる初期サインとして注意が必要なこともあります。
意欲の低下
片付けができないと、子供自身の自己肯定感も下がり、挑戦意欲も低下し、様々な行動への不安も出てきてしまいます。
「やっているのにうまくできない」「どう片付ければいいのかわからない」
こういった困りごとが段々と重なり、周囲からも否定されていくうちに
心の負担が大きくなってしまいます。
家庭でできる片付け支援と対処法
お子さんが片付けができない時、大切なのは「叱る」ことではなく「一緒に考える姿勢」です。ADHDなどの発達特性があるお子さんのとっては、片付けが、脳の機能的な困難を伴う”作業”です。
本人のやる気だけの問題ではなく、環境と支援の工夫が必要になってきます。
見通しを立てやすくする
工夫としては、片付けを「一気に全部やる」のではなく、
「今日の片付けは、この引き出しだけ」という風に出来た達成感を
味わいながら、無理なく続ける方法です。
今日やる箇所の見通しが立つことで、お子さんも安心し、
出来たことにより、自己肯定感が高くなっていきます。
さらに、片付けが終わったら、写真などに残しておき、
元の場所に戻す練習もできます。
見える収納で安心感を支える
ADHDのあるお子さんの特性で、「視覚から消えると忘れてしまう」というものがあります。そのため、箱や引き出しにしまってしまうと、その存在を忘れてしまい、物を見失う原因になります。
有効な対策として、ラベルを使う、オープンな棚にするなど見えてわかる収納がお子さんにとっての安心につながります。
物の量のコントロールについては、この引き出しに入る分だけというルールを決めると、将来の溜め込み症になるリスクも減らせるのではないかと思います。
タイマーや音声で“時間”を見える化する
片付ける時間の設定も、お子さんが片付けやすい時間で区切るやり方が良いと思われます。タイマーやアラームなどを使い、「5分間だけ」「アラームが鳴るまで」など時間を区切ると、集中が途切れずに片付けできます。
一緒に手放す練習を行う
「溜め込み症」の予防には物を「手放す」経験を積むことが大切です。
ADHDのあるお子さんにとって、「捨てる判断」はとても難しいことですが、一緒に、「これはいる物?」「これは使っていないから手放そう」という具合に確かめながら、判断力をつけていくと、良いでしょう。
散らかっていても責めない関わり方
親が散らかっている部屋を見て、一方的に叱るのではなく、
できないその子の悩みに寄り添い、少しづつ練習していけば、
片付けのスキルは上達していきます。
「今は練習している時期」と割り切って、あたたかく見守る姿勢も
大切です。
専門家や支援機関に相談するタイミング
家での工夫を続けても、なかなか改善する様子が見られない時は、
専門家に相談することも大切です。
発達障害やADHDの診断を受けていなくても、発達相談センター、
スクールカウンセラー、心理士に相談することで、お子さんとの
日々の関わり方や環境の調整の仕方などを教えてもらうことができます。
子供が成長するにつれ、学校の課題や友人関係、将来の仕事でも
「片付け」の力は重要視されます。
早めの支援を受けることで、本人もご家族も心の安定を保つことができます。
叱るより理解と工夫を
部屋を片付けられないという傾向は、脳の特性である場合があることを
理解することが大切です。
ADHDの特性があるお子さんほど、片付けられないことによって、
自信をなくし、自己肯定感が低くなりがちです。
親が理解し、環境を整えるだけで、片付けられるようになっていきます。
部屋が整うようになると、自然に心も整います。
そして、将来、「物を手放せない」「散らかったまま動けない」などの
状態が続くようであれば、溜め込み症の傾向かもしれません。
その時は恥ずかしがらずに、専門家に相談してみてください。
支援の一歩は「理解しよう」とするところから始まります。
もし家庭だけでは対応が難しい場合、フリースクールのような学びの場での支援も有効です。
ステラBASEでは、子どもの特性に合わせたサポートや生活リズムの習慣化を支援しています。
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