
「どうして学校に行けないんだろう?」「うちの子だけ、なぜこんなに感情の起伏が激しいの?」
不登校や発達障害、情緒障害の子供たちと向き合うとき、私たちはつい「その子自身の問題」として見てしまいがちです。けれど、子供たちの行動や状態は、実は“その子だけ”の問題ではなく、周囲との関係性や環境との相互作用の中で起きているのかもしれません。
今回は「個人と環境の相互作用」という視点から、不登校や発達障害の二次障害、情緒障害について考えてみたいと思います。
問題を「子供だけ」に押し付けていませんか?
子どもが不登校になると、親も先生も「何がいけなかったんだろう」「どうやったらまた登校できるのか」と必死になります。
けれど、問題の矛先が「本人の弱さ」「家庭の甘さ」など、個人の責任に向きすぎると、誰もが疲弊してしまいます。
大切なのは、“子供が持つ特性”と“今置かれている環境”の関係に目を向けることです。
子供自身を「問題」として見るのではなく、子供と環境との“関係”の中で起きている「すれ違い」に気づくこと。
そこに、回復や改善のヒントがあります。
「個人の問題」とされる背景とは?
たとえば発達障害のある子供たちは、次のような特性を持っていることがあります。
音や光、人の気配などの感覚の過敏さ、切り替えの苦手さ、見通しの持ちにくさ、コミュニケーションのずれなど。
これらは「わがまま」や「反抗」ではありません。けれど、日常生活や学校では誤解されがちで、その結果、否定されたり孤立したりしてしまいます。
そうして起こるのが「二次障害」です。たとえば、自信を失い、自己肯定感が下がる、些細なことで過剰に不安になったり、落ち込んだりするなどの他にも怒りやパニックが爆発的になるなどがあげられます。
これらが「情緒障害」と呼ばれる状態にまで進んでしまうこともあります。
環境が与える影響
子供が感じている“生きづらさ”の背景には、環境からの影響も大きくあります。
たとえば学校は、集団で同じ行動を求められる場です。
「みんなと同じようにできない=ダメな子」と思われがちな空気があります。
家庭でも、「早く」「普通に」「我慢して」といったプレッシャーが、無意識のうちに子供に伝わってしまうことがあります。
また、現代社会はSNSや情報過多で、“理想の子育て像”が溢れています。
それに振り回される親もまた、余裕を失ってしまうのです。
相互作用とは?問題の「間」に目を向ける
“相互作用”とは、子供の特性と、環境からの働きかけが互いに影響し合っている状態のことです。
たとえば音に敏感な子が、騒がしい教室にいると不安で落ち着かなくなり、結果として癇癪を起こしてしまう。他にも、先の予定が分からず不安な子が、「何でそんなことも分からないの?」と責められた結果、自己否定感を深めてしまう。
これらはすべて、子供単体の問題ではなく、環境との“ミスマッチ”から起きている反応です。
だからこそ、「どうやって変えるか」ではなく、「何が合っていないのか」を見つめる視点が必要です。
実際にできること:環境の“微調整”から始めよう
すべてを完璧に変える必要はありません。
まずは、子供が安心できる“ちょっとした工夫”から始めてみませんか?
予定を事前に伝える(見通しを持たせる)、静かな場所で学べる環境をつくる、「できたこと」に目を向けて声をかける、苦手なことは無理にやらせず、得意なことで自信を育てる。
これだけでも、子供が見せる表情や反応が変わってくることがあります。
“変える”のは、子供ではなく“環境”でいいのです。
個人を責めず、環境を問い直す視点を
不登校や発達障害、情緒障害など、これらを「個人の問題」として捉える時代は、終わりにしなければなりません。
子供は、「ありのまま」でいられる場を求めています。
そして、私たち大人もまた、「何かを変えなければ」と頑張るのではなく、「そのままでも大丈夫」と言える関係性の中で、共に育ちあうことができます。
問題の“原因”ではなく、“関係”に目を向けること。
それが、子供にも大人にも優しい社会の第一歩になるのだと思います。
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