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「うちの子は、発達障害と診断されたけど、“現実か空想なのか曖昧な話”をするようにもなった…」
そんな戸惑いの声を、保護者の方から聞くことがあります。
発達障害(ASD・ADHD)と統合失調症。
全く別の病気のように思えるかもしれませんが、実はこれらの状態が同時に存在するケースもあります。
今回は、それぞれの特性と併存の可能性、そして支援のヒントについて、専門的な知見を交えながらわかりやすくお伝えします。
複数の特性を生きる子供たち
発達障害(ASD・ADHD)と統合失調症。
この2つは、一見するとまったく異なるもののように思われがちです。発達障害は「先天的な特性」であり、統合失調症は「後天的に発症するケースが多い精神疾患」とされるからです。しかし、実際にはこれらが併せ持たれるケースも少なくなく、子供や若者の心と行動に現れるサインを見極めるには、より深い理解が求められます。
発達障害の枠を超えて現れる「もうひとつの困りごと」
ASD(自閉スペクトラム症)やADHD(注意欠如・多動症)は、子供のうちから特性が見られることが多く、就学前や小学校低学年の段階で支援が始まることもあります。対人関係の難しさ、こだわり、感覚の過敏、不注意や多動性などが学校生活で目立ち、支援級や通級によるサポートを受ける子も増えてきました。
けれど、思春期を迎える頃になると、これまでの特性とは少し違った「困りごと」が現れる場合があります。例えば、「誰かに監視されている気がする」「声が聞こえる」「みんなが自分の悪口を言っている」といった発言が出てくることもあります。
それらは、単なる思春期の不安定さとは異なり、統合失調症の初期症状(前駆症状)である可能性もあるのです。
統合失調症は、主に10代後半から20代前半にかけて発症することが多く、現実検討能力が弱まり、幻覚や妄想といった症状が現れます。もともとASDやADHDの診断を受けていた人の中にも、青年期になってから統合失調症を発症するケースが報告されています。
外からは分かりにくい症状の見え方
発達障害と統合失調症が併存する場合、それぞれの特性が絡み合い、外からは非常に分かりづらく見えることがあります。
例えば、ASDの子供が空想的な話をよくする場合、それが「こだわりの強さ」や「独特な表現」として捉えられがちです。しかし、その空想が徐々に現実と区別がつかなくなってきた場合、統合失調症の「特性」として捉え直す必要が出てくることもあります。ADHDの不注意や衝動性が、統合失調症の認知機能の乱れと重なって見えることもあり、医師や支援者であっても正確な診断に時間を要することがあります。
さらに、これらの特性は「固定的」ではありません。生活環境やストレス、身体の状態によって、症状が目立つ時期と落ち着く時期を行き来することもあります。そのため、「あのときはASDが目立っていたが、今は統合失調症の症状が強く出ている」というように、状態像が変化することも考慮しなければなりません。
支援のアプローチ:何を手がかりにするのか
重要なのは、「診断名」ではなく、目の前の子供や若者が、何に困っているのかという視点です。診断名は医療的な支援や制度を利用するうえでは必要なものですが、それ自体が本人の全てを語るものではありません。
例えば、統合失調症の症状に対しては医療的な治療(必要に応じて薬物療法など)を行いつつ、ASDやADHDに見られる情報処理の特性には、環境調整や視覚支援、スケジュールの明確化といった支援が有効なこともあります。
また、統合失調症の回復には「ストレスを減らす」ことがとても大切ですが、これはASD・ADHDの子供にも有効な関わりです。刺激の少ない静かな空間で過ごすこと、本人のペースを尊重すること、安心して話ができる大人がそばにいること。そうした共通点が、複数の特性を持つ子供たちにとっての支えになります。
多職種の連携、家族との丁寧な対話、そして「この子の本当のつらさはどこにあるのだろう?」という探究的な姿勢が、支援の質を大きく左右します。
さいごに
発達障害、統合失調症それぞれが複雑で多様な顔を持つ特性です。そして、これらが複数重なるとき、本人が感じる生きづらさもまた、一層重層的なものとなります。けれど、その生きづらさの中にある「SOSのサイン」は、私たちが耳を傾けることで、少しずつほどいていけるはずです。
「なんだか、これまでと違うな」「この子の話、何か引っかかる」と感じたとき。
それは、支援の方法を考え直すタイミングかもしれません。
診断名にとらわれず、子供一人ひとりに寄り添う視点を、私たちステラBASEでは持ち続けていきたいと思います。
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